ファミリーマートの挑戦。「GDP500兆円のうち、何兆とれるか?」
文化放送『The News Masters TOKYO』。今回は、ファミリーマートの澤田貴司社長に『マスターズインタビュー』。伊藤忠商事からユニクロのファーストリテイリングに転職しナンバー2として柳井正さんと一緒に会社を大きくした立役者だ。その後、ファーストリテイリングの次期社長就任を要請されたが、これを固辞して独立、企業の経営支援をするリヴァンプを設立した。
そこでロッテリアの経営再建やクリスピー・クリーム・ドーナッツの日本進出などを手掛けて一躍注目されるようになった。"企業再生のプロ"という異名を持つ澤田社長に、タケ小山が迫る。
流通業界の可能性。そして柳井正さんとの出会い
伊藤忠商事時代に、イトーヨーカ堂グループがセブン-イレブン米国法人を買収・再建したプロジェクトに携わった澤田社長。当時、セブン-イレブンはアメリカで破綻したのに対して日本では大成功を収めていた。本家を飲み込むダイナミックなビジネスの下剋上を目の当たりにしたこと。同時に流通業の将来性を感じたことが、今の澤田社長に繋がっている。流通業への強い思いから伊藤忠を退社し、1997年ファーストリテイリングへ転職。今でさえカジュアル衣料業界では世界第3位だが、澤田社長が入社した当時は山口県宇部市にある無名の会社だった。「ユニクロなんて誰も知らなかったので、東京の人から、なにそれ"のらくろ"か?なんて言われましたよ」
オフィスは田んぼのあぜ道の先にぽつんとある小さな倉庫。「僕は入るつもりは全くありませんでした」と語る澤田社長。しかし、柳井正さんの話を聞いているうちに引き込まれてしまい、「この人とだったら、すごく勉強になるんじゃないかと思い始めて、あまり会社のことは知らないのに帰る時には"お願いします!"と言っていた」
自分の会社の説明をするのではなく、ビジョンを語る柳井さんにすっかり魅了されてしまった澤田社長。稀代の経営者と言われる柳井さんから学んだことは"情熱"と"決めること"。間違うこともあるかもしれないが、どんどん決めてあげることが"リーダーとして"大事である。その教えを企業再生の中でも活かして実績を積み重ねてきた。
転職、起業と様々な会社を経験している澤田社長に転職のアドバイスを聞くと、即答で「しないほうがいいですね」と。「本当に自分のやりたいことがはっきりしているのなら転職しても構わないが、今の会社がイヤで他を探すというのは違うと思う」
現場主義
「現場がわからなくては、仕事はできない」
澤田社長は常に現場を大切にしてきた。ファミリーマートの社長就任が決まるとすぐに実店舗でスタッフ研修を受けた澤田社長。レジでの接客から商品の発注、品出し、清掃に至るまで店舗スタッフがやる仕事はひと通り体験した。現場での体験を通してやるべきことが見えてくる。新しいアイデアが浮かぶこともある。コンビニエンスストアでのスタッフ研修から澤田社長の企業改革はスタートしている。
同じ流通業でもユニクロと決定的に違うところは『食』。
腐るモノと腐らないモノの違いが、在庫に対するテンションの違いだと言う。「常に在庫のことを考えてなきゃならない。考える座標軸が違う。面白いです!」社員とのコミュニケーションを大切にすることも澤田流。そのひとつとして『澤田メシ』がある。はじめたキッカケは「毎日ファミリーマートのモノを食べたい」という当たり前の理由から。それと「社長になると毎日料亭でメシを食べているんじゃないか」と思われているようなので「俺は違うぞ!」と伝えたかったそうだ。
プラス「仲間と一緒に食べたいからとスタートさせたのが澤田メシ」5~6人の社員とランチをしている様子を毎日社内向けにアップしているという。澤田メシでは、"彼氏がいないから紹介して欲しい"と恋愛相談をされたり、時には"社長の言っていることはよくわからない"と文句を言われたりもする。あくまでもカジュアルな"メシ会"だそうだ。
澤田社長の現場主義の信念の軸には、24時間体制のコンビニエンスストアで、いまこの瞬間も現場で頑張ってくれているストアスタッフの存在がある。「ファミリーマートの店舗で働いてくれてる20万人近くの人々が幸せにならないと、その先のお客様を幸せにすることができない」それが澤田社長のベースの考え方だ。
美味しさの追求
澤田社長自ら新商品(6月20日発売)の紹介をして、ひと足早くタケ小山が試食した。
◆ひれかつサンド(税込450円)
◆石窯玄米ロール パストラミポーク&ボンレスハム(税込278円)
◆石窯玄米ロール ツナ&トマト(税込268円)
家の近くにファミリーマートがあり、毎日のように通っているというタケ小山は新商品「石窯玄米ロール パストラミポーク&ボンレスハム」を試食。「パンが大きくてもちもちしている。これは、うまし!」と笑顔で大きく頷いた。
ファミリーマートではイートインスペースを設置した店舗を増やしているそうだ。これからのコンビニエンスストアは「ゆっくりと買い物をしていただいて、食べるスペースもあって、休んでいただくというニーズはあると考えています」。商品ではお惣菜系が増えているようだが、「少子高齢化、有職主婦や単身の世帯も増える等、社会が変化する中で料理をする家庭が少なくなってきている」
"内食"や"外食"が減少しているのに対して、総菜など調理済み食品を買って食べる"中食"が伸びている。「日本の食のマーケットは約68兆円と言われている中で、中食だけが成長している。ここはコンビニエンスストアが最も重要視しているところで、我々も中食に投資していこうと」ファミリーマートの今一番の大きな商品戦略として取り組んでいるのが"中食"の改革だと言う。
先日、レジの横で販売しているファミチキ等のファストフーズ惣菜を『ファミ横商店街』と名付け、活気のある売り場を演出して販売する方針が発表された。ここにはサークルK・サンクスの人気商品「焼きとり」もリニューアルしてラインナップに加わる等、次々と"中食"が拡充されている。
ブランド統合とコンビニの進化
昨年の9月にサークルK・サンクスの約6,300店舗とファミリーマート約1万2,000店舗が統合した。業界首位のセブン-イレブン・ジャパンと並ぶ規模の業界第2位となった。現在全国にコンビニエンスストアは約6万店舗あり、上位3社で90%程度を占めている。「いかにして面を取っていくか」国盗り物語を彷彿させる面取り合戦は重要な企業戦略となっている。
「面を押さえて商売をしていくことは加盟店にとっても極めて大事なことだと思ってやっています。」
今年の2月にはファミリーマートとサークルK・サンクスの商品統合が完了するなど、統合を加速させている。「一刻も早くワンブランドのファミリーマートとしてお客様に提供していきたい」
店舗統一の完了予定は、当初2019年2月だったが、経営統合の効果が早くも現れたことで半年前倒しの2018年8月末に変更された。澤田社長の思いと狙いが現実のものとなって動いている。
ずっと右肩上がりの成長を続けているコンビニ業界。澤田社長は進化し続けていくコンビニエンスストアについて「マーケットに対してニーズを捉え、すぐに変化して対応する。これが出来る限りまだまだ伸びていく」と言う。さらに
「大まかにいうと日本のGDPは約500兆円、小売業のマーケットは約140兆円。そのうちの何兆円を取れるかと考えると楽しいじゃないですか」
365日24時間営業のコンビニエンスストアにはまだまだ開拓できるビジネスチャンスが埋まっている。「例えばATM。銀行の中での存在感はすでに縮小して、コンビニにとって代わられている。そういうことは他の分野でもどんどん起きてくる」澤田社長の今後の戦略が楽しみだ。
ファミリーマートが担う未来
ファミリーマートでは現在約3,800店舗で『多目的トイレ』を設置している。多目的トイレは、車いすが動けるような広いスペースが確保されていたり、乳幼児のおむつ交換台などを併せ持つトイレだ。ホームページの店舗検索画面に車いすをかたどったマークがあれば設置されていることを示す。
きっかけは澤田社長のリヴァンプ時代の部下からのメールだった。「外出先で車いすが使えるトイレがどこにあるのかわからなくて不安。でもトイレの場所が事前にわかっていれば、その場所を意識して安心して出かけることができるんです。」澤田社長が担当部署に諮るとメンバーはすぐに対応してホームページに反映してくれた。
東京オリンピック、パラリンピックが開催される2020年までに8,000店舗にまで増やす計画。「できることは全力で取り組みたい」と澤田社長。
「やさしいファミリーマートですね!」とタケ小山。そして、ファミリーマートの今後について伺った。
「ファミリーマートに携わる20万人の仲間とともに日本の社会にとってなくてはならない企業にしていきたい」
高齢化社会が進む日本で、ファミリーマートができる付加価値のサービスを考えていかなくてはならない。それには「コストではなく、理念が大事。理念が人を突き動かすと思っている」企業としてどう取り組んでいくのかという理念が大切であると澤田社長は力説する。
澤田社長は、「単純にモノを売っていくら稼いだとかいうものを超越し、我々の会社が社会に対して何を果たすのか、ということが大事」と締めくくった。澤田社長が率いるファミリーマートは今後どんな展開を見せてくれるのか。タケ小山もファミリーマート愛用者の一人として大きな注目を寄せている。
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