2018/11/06

新旧元号の商標登録は不可 政府、便乗商法防止を狙う

 政府は5日、来年5月1日の皇太子さまの新天皇即位に伴う改元を控え、新旧の元号は商標登録できない対象であると明確にするため、審査基準を来年2月をめどに見直す方向で検討に入った。菅義偉官房長官が記者会見で明らかにした。元号を利用した便乗商法を防ぐ狙いがある。
 特許庁は商標法に基づく「商標審査基準」で商標登録の要件を規定している。元号に関する現行の審査基準は「現元号として認識される場合」、登録を受けることができないと定めている。
 実際の審査では、現元号に限らず「昭和」「大正」など過去の元号でも商標登録は受け付けていない。

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東北大学特任准教授・弁理士
稲穂健市
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いよいよ来年5月の改元が迫って来ました。「昭和」から「平成」に切り替わったとき、新元号について様々な予想を立てた方がいらっしゃいましたが、私の知る限り「正解」された方は一人もいなかったように思います。果たして今回はどうなるのでしょうか?

新たな元号が出現することで、それにあやかった名称が登場するのは何ら不思議なことではなく、実際に、「平成」「昭和」「大正」「明治」などの元号を含む企業名や団体名は複数存在しています。

昨日、菅義偉官房長官が、新旧の元号は商標登録できない対象であると明確にするために審査基準を見直す方向で検討に入ったことを明らかにしました。元号を利用した便乗商法を防ぐ狙いがあるとのことですが、現在の審査基準でも、「現元号として認識される場合」(「平成」、「HEISEI」など)は商標登録できないことになっています。また、実務上も、「旧元号」であっても元号として認識されるに過ぎない場合は、「識別力」(自分の商品・サービスと他人の商品・サービスとを区別できる働き)がないことから商標登録できません。

ただし、「元号を含む商標」であっても「識別力」が認められれば登録可能である点には注意が必要です。たとえば「平成」を例にとると、スタジオジブリが「平成狸合戦ぽんぽこ」(商標登録第3141473号など)を、フジテレビジョンが「平成教育委員会」(商標登録第4897654号)を商標登録しています。「昭和」についても、「昭和大学」(商標登録第5427777号)などが登録済みです。

また、元号の文字のみで登録されているものもあります。たとえば、「大正」は大正製薬の登録商標ですし(商標登録第517497号など)、「明治」は明治ホールディングスの登録商標ですし(商標登録第279379号など)、その前の元号である「慶應」も慶應義塾の登録商標となっています(商標登録第5066864号)。各組織の「ブランド」として広く認識されたことから例外的に登録が認められた例となります。

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