政府は9日、経済財政諮問会議を開き、中長期の経済財政試算を示した。今後高い成長率が続いても、国と地方を合わせた基礎的財政収支は2025年度に2兆4千億円の赤字が残り、目標とする黒字化には同程度の歳出削減か歳入増が必要だという結果だった。17年度の税収増により前回1月の試算から1兆4千億円改善したが、健全化はなお厳しい情勢だ。
黒字化目標は20年度から5年先送りしていた。安倍晋三首相は、歳出効率化のメニューを示す新たな改革工程表の取りまとめを茂木敏充経済再生担当相に指示した。
2018/7/10
25年度も赤字残2兆円超 基礎的財政収支、黒字化厳しく
みずほ証券チーフクレジットストラテジスト
大橋英敏
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プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化は、財政の持続可能性を確保すること、および国債(日本円)に対する持続的な信認を確保する観点から重要と考えられています。一方、現実的には、抜本的な収支構造改善(特に雪だるま式に積みあがる社会保障費の圧縮)無しに達成することは困難です。今回公表された試算は、抜本的な収支構造改革抜きで、比較的高い成長率を仮定した場合(=相応の税収増を期待)の試算であり、ある意味予想通りであり、またある意味、何の解決策にもつながらないものでもあります。
日本は外貨建て債務がほとんど無く、経常収支黒字が続き、国内純貯蓄が巨大であり、通貨高傾向に苦しむ国です。現在日銀が行っている金融政策は、このような我が国の傾向に対する対処療法なのですが、一部のリフレ派と呼ばれる人たちが主張するように、不換紙幣制度の下で財政赤字を積極的に積み上げる(そして実質的に中央銀行引き受けとする⇒統合政府の下で単純な紙幣ばら撒きを実施する)という主張にも一部関与していると言えます。
一方、紙幣ばら撒きがハイパーインフレを引き起こすとの懸念は依然として根強く、格付会社も債務の増加(対GDP)には常に警戒しています。このように、政府の政策として紙幣ばら撒きの誘引が続くなか、財政健全化に向けたポーズを取り続けることも大切なのです(格付会社や財政健全化を信望する金融市場参加者に対して)。今回の試算は、実は、このような意味があるのではないかと考えています。
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