企業法務を得意とする弁護士の中田光一知さんをパーソナリティに、報道記者経験8年の中嶋美和子さんをアシスタントに迎えて明日のビジネスに役立つ情報をお送りする15分番組です。
法務というと、訴訟や苦情から守ることだけを考えてしまうかもしれませんが、この番組ではもっと積極的なお話を展開していきます。
真面目に攻めの法務を語る中田弁護士と、それをわかりやすく砕いてくれる中島さん、番組では二人の絶妙なトークが展開されます。
中田総合法律事務所 弁護士
昭和34年 東京都生まれ。
東京都立国立高校を経て、
早稲田大学法学部卒業。
平成元年に弁護士登録(第二東京弁護士会)、平成6年に独立開業。
弁護士活動のほか、講演活動、
執筆活動、各メディア出演でも活躍中。
明治学院大学法学部卒
大分県出身
1999年大分朝日放送アナウンサーを経て、2007年よりフリー報道記者としての経験を活かしつつ、今は硬い番組からバラエティまで幅広く出演している。
オフィス北野所属
■2011年6月25日放送分:不動産の流動化■
ビックカメラが2002年に行った「信託受益権」の売却――
"不動産の流動化"は、
2006年、ジャスダック市場への上場をきっかけに
証券取引所により「粉飾」と指摘されました。
2010年には、一連の会計処理を巡る
株主代表訴訟にまで発展。
どこに問題があったのでしょうか?
■不動産の流動化とは
【不動産の流動化】とは
"固定資産"の不動産を、証券化して
"流動資産"として活用する――こと。
中田「簡単に言うと
『キャッシュで使えるようにしよう』ということ。
難しく言うと、
自分の固定資産を"信託受益権"という形にして
『特定目的会社』に売却する――ということです」
"不動産"そのものを売却するのではなく、
不動産に対して設定した"信託受益権"を売却することで
得た"対価"をキャッシュとして使うための手段で
法的にも制度化されています。
中田「違法か合法か――という議論ではなくて、
むしろ促進しようという形になっています」
■ビックカメラの不動産流動化が問題になったワケ
中田「これはライブドア事件と共通するところがあるんです」
不動産に設定した"権利"を売却して対価を得る際、
外部への売却であれば"利益"として計上できますが、
"身内"=連結企業グループの中で流通させた場合、
"利益"を生むことにはなりません。
中田「グループの外から得た利益は"利益"として計上できますが
"中"だけで回したのでは"利益"ではない――
単に"つけかえた"だけということになります」
2002年、ビックカメラは
当時のビックカメラ 社長が設立した会社
「豊島企画」と共同出資し「特定目的会社」を設立。
豊島企画とビックカメラに資本関係はありません。
問題視されたのは、信託受益権を売買した特定目的会社が
ビックカメラと同一視することができるのかどうか――という点。
特定目的会社の設立には
豊島企画が約73億5千万円、ビックカメラが約14億5千万円を出資。
中田「ビックカメラは、豊島企画が圧倒的に出しているから
"他人に渡したのと同じ"と考え
『売却』として計上。
税務署も売却益が出ているから税金をとっているんです」
■税務署と180度異なる 証券取引所の見解
ビックカメラは、2006年にジャスダック市場に上場。
すると東京証券取引所は、2002年の売買取引について
"身内同士の金融取引であり、売却利益を計上するのはおかしい"
=『粉飾』であると指摘。
中田「証券取引所は、
"公開会社"となって株をマーケットに出すからには
一般市民に対して正しい企業情報を開示しなさい――
という姿勢で、
ビックカメラと豊島企画の関係が
同じ企業体=連結であるならば、
連結内の取引を利益計上すれば『粉飾』であり
"正しい開示"になっていない――として
『金融取引』に訂正しているんです」
中嶋「上場するまではまかり通っていたことが
ダメになってしまうんですね」
つまり、ビックカメラは2002年の取引に関する税金を
支払っていたにもかかわらず、
証券取引所の指摘は税務署とは正反対のものだったのです。
中田「証券取引所と税務署の見解は
180度、全く違うんです」
■会計処理を巡り株主代表訴訟に発展
2010年8月、ビックカメラの株主が、
不動産流動化の会計処理を巡って
ビックカメラが被った損害の賠償を
代表取締役らに求める株主代表訴訟を起こしました。
中田「ビックカメラは税金を払い過ぎ、
証券取引所に課徴金を取られたんです。
その上、後日談があって
いったん不動産流動化して資金調達したけど
池袋で"家電量販店戦争"が起きて
結局、不動産信託受益権を買い戻して、
それに対しても税金を払っているんです」
中嶋「損してばっかりじゃないですか!」
■"戦略法務"でしっかりとした事前検証を
中田「最初から何を目的としているのか
"スキーム"をつくっていれば、
こういうことにはならなかったはずです。
"上場したから こういう問題が起きた"ということでは
ないと思います。
"あとから見てどうなのか"という事前検証をしておかないと
きちんとした取り組みができていないことになります」
ビックカメラには、資金調達の必要性がありましたが、
そこで取り組んだこと(不動産の流動化)が
"あとあとどうなるのか――"ということについて
きちんとしたケアをしていたのでしょうか。
中田「していなかったと思われるわけです。
税務署と証券取引所の見解が真っ向から対立することは
あまりないことかもしれないけど、ありうること。
弁護士が関与して、そうしたこも全て考えて
"スキーム"を作って
事後検証にも耐えられるような事前の検証をして
動いていくことが必要なんです」
■2011年6月18日放送分:過去最大規模の個人情報流出問題■
■1億人規模の個人情報流出
ソニーは4月、
ユーザー数、世界で7,700万人のゲーム配信サービス
「プレイステーションネットワーク」と、
映像・音楽配信サービス「キュリオシティ」のアカウント情報が
不正アクセスによって
流出した可能性があることを発表。
その後も、グループ企業で個人情報流出が相次ぎ
合計1億人を超える、過去最大規模の問題へと発展。
■ソニー対ハッカー
今回の問題の背景にあると考えられている裁判が
2010年1月に始まった
ソニーと、プレイステーション3(PS3)のハッキングに成功した
ジョージ・ホッツ氏(当時21歳)との訴訟。
中田「ソニーの勝訴的な和解だったと考えれらえます」
これをソニーによる"ハッカー叩き"とみた
ハッカー集団が"報復宣言"をしました。
中田「正面からソニーに対して『攻撃をする』と宣言していたんです」
中嶋「正面からって...これ、悪いことですよね??」
ハッカー行為は違法であり、
日本でも不正アクセス禁止法で禁じられていますが、
ハッキングを趣味や職業にしている人も存在し、
企業情報だけでなく、国家機密、軍事情報をめぐって
世界中でハッカーとの戦いが起こっています。
そうした中で、2010年にソニーが起こした訴訟は、
ハッカー集団の闘争心に火をつける形になったといえるでしょう。
■万全のセキュリティで情報流出をガードする企業責任
中田「ソニーはある意味、被害者でもあるんですが・・・」
中嶋「明らかに被害者だと思うんですけど、
責任があるんですか??
対策を講じていなかったことが責任何ですか?」
中田「そういうことなんです」
企業が顧客サービスの提供のために
個人情報を集める際には、情報の漏洩がないよう
管理しなければなりません。
また、ハッキング技術の進歩に対抗するため、
最新技術の導入が求められます。
今回、最新の技術でセキュリティを施していたのでしょうか?
中田「ハッキング行為をした人は処罰をされますが、
された側も、セキュリティがードをしていなかったことで
責任を問われる状況です。
ソニーは"最新のセキュリティじゃなかった"とは
言っていないのかもしれないけれど、
『セキュリティが脆弱だった』と認めて謝罪しています」
■損害が発生した場合
個人情報流出によって損害が発生した場合、
ソニーは損害賠償責任を負います。
中嶋「1億人に損害賠償を?!」
インターネット上の個人情報流出は
被害が広範に及ぶことを前提として考える必要があります。
そのため、クレジット会社は月々の利用限度額を設定。
中田「ネット上で活動する人は、
そういう意味でのガードをしているから、
巨額の賠償をさせられる可能性はあるけれど、
ある程度の限度はあるのかな」
■先を見据えたセキュリティ対策
中嶋「信用してクレジットカード決済をしているので、
今回の事件で、ネットショッピングが怖くなりました」
中田「起きてしまった損害を賠償しなければならない責任以上に
お客さんが離れることが怖い。
PS3の会員の1割が離れてしまっただけで
770万人がいなくなってしまう――これはすごいことです」
個人情報管理は、起きてしまったことへの対処も大切ですが、
将来、顧客離れが起きることや、
企業活動に制約がかかってしまうことを考慮して
セキュリティ対策を施す必要があります。
中田「人的・組織的なセキュリティ、
物理的・技術的なセキュリティをきちんとしなければいけない。
後から考えて『脆弱でした』ということはあってはいけない。
企業秘密もたくさん持っているわけですから、
技術の進歩に合わせて、セキュリティ技術を高め、
管理する体制として、組織的・人的な側面でも
きちんとセキュリティをかけていかなければいけない、
安穏としていられない時代なんです」
■攻めの姿勢でセキュリティを
中田「ソニーは被害者でもあるんですが、
なぜ被害を受けたのか、きちんと反省して、
将来の糧にしていかなければいけません。
複雑化していく現代社会を生き抜く知恵として、
積極的に前向きに考えていく...
守るだけじゃなくて、攻めなきゃいけないということですね」
中嶋「責任を持って日々進歩しなければいけないんですね」
■2011年6月11日放送分:ゲスト シコー 代表取締役社長 白木 学さん■
先週に引き続き、
世界で初めて携帯電話の「マナーモード」を開発し、
最近では、スマートフォンで採用されている
「オートフォーカスモータ」でトップシェアを誇る
シコー株式会社 代表取締役社長 白木 学さんにお話を伺いました。
シコーは
「"守る特許"ではなく"攻める特許"」を掲げ、
独創的なアイディアで、次々に新しい製品を生み出しています。
知財=知的財産を専門的に取り扱う中田光一知先生は、
"アイディアを実現して
特許をビジネスに組み立てていこうと意欲的" と分析。
中田「"特許"と ひと口に言いますけど、
"守る特許"と"攻める特許"は180度違うんです」
■2011年6月4日放送分:ゲスト シコー 代表取締役社長 白木 学さん■
『弁護士中田のビジネスナビゲータ』は
「ビジネス」の世界で今、起きている出来事について
中田総合法律事務所の弁護士・
「法律」の観点から わかりやすく解説するほか
時には 企業経営に携わっている方をゲストにお招きして
ビジネスの最前線の話題をお聴きします。
6月4日 ゲスト:シコー株式会社 代表取締役社長 白木 学さん
■シコー 株式会社について
1976年(昭和51年)ハイテク・ベンチャー企業として数名の社員で設立。
事業内容は、携帯電話のマナーモードに使われる「振動モータ」
パソコンのCPUの「冷却モータ」などの
"超小型モータ"の製造・販売が中心。
世界で初めてマナーモードの振動モータを開発し、
スマートフォンに使われているオートフォーカスモータは
トップシェア。
特許保有件数は1千件にも及ぶ。
今年、創立35周年を迎える。
「シコー」の由来は「思考」から。
■白木 学さんプロフィール
1947年 生まれ(63歳)
東京理科大学在学中「特許研究部」を設立。
大学時代には、テレビ番組『シャボン玉ホリデー』で使われた
「シャボン玉発生器」を発明。
1976年、シコー技研=現在シコー株式会社を設立。
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