企業法務を得意とする弁護士の中田光一知さんをパーソナリティに、報道記者経験8年の中嶋美和子さんをアシスタントに迎えて明日のビジネスに役立つ情報をお送りする15分番組です。
法務というと、訴訟や苦情から守ることだけを考えてしまうかもしれませんが、この番組ではもっと積極的なお話を展開していきます。
真面目に攻めの法務を語る中田弁護士と、それをわかりやすく砕いてくれる中島さん、番組では二人の絶妙なトークが展開されます。
中田総合法律事務所 弁護士
昭和34年 東京都生まれ。
東京都立国立高校を経て、
早稲田大学法学部卒業。
平成元年に弁護士登録(第二東京弁護士会)、平成6年に独立開業。
弁護士活動のほか、講演活動、
執筆活動、各メディア出演でも活躍中。
明治学院大学法学部卒
大分県出身
1999年大分朝日放送アナウンサーを経て、2007年よりフリー報道記者としての経験を活かしつつ、今は硬い番組からバラエティまで幅広く出演している。
オフィス北野所属
■2011年5月21日放送分:ライブドア事件と実刑判決について■
■ライブドア事件とは
2004年9月期のライブドア連結決算で、
実態は3億円の経営赤字だったにもかかわらず
50億円の経常黒字であったとする
虚偽の有価証券報告書を提出した
「証券取引法」(現 金融商品取引法)違反の疑いで
2006年1月、ライブドア 堀江貴文社長(当時)ら4人が逮捕されました。
堀江被告の一審判決は「懲役2年6月」
二審判決、最高裁も控訴を棄却し、実刑が確定。
中田「53億円の粉飾をして50億円の黒字を出した形にして
証券取引所を通じて公開したことが問題になりました」
粉飾決算はなぜ問題なのか・・・?
投資家は、証券取引所や、企業情報として開示された情報を元に
上場された株の売買=投資判断をしますが、
もし、開示された情報が間違っていたら?
中田「3億の赤字なのか、50億の黒字なのか、
投資する人には ものすごい大きな問題でしょ。
だから、正しい情報を正しい形で開示しなければ
罰則もあるという法律なんです」
■第三者性が問われた投資事業組合
ライブドア事件では"投資事業組合"が絡んでいる点が問題となりました。
「投資組合」が株を売ることでお金を得ると、
投資組合に出資した「会社」には配当を出る・・・
これは「会社」にとっては利益??
投資組合が会社との関係で"第三者性"が確保されていれば、
"外から利益が入ってきた"として「利益計上できる」――。
しかし「投資組合」が「会社そのもの」と"一体"であれば(第三者でなければ)
傘下(グループ内)のお金の移動と考えられます。
中田「この裁判では、投資組合が本当に第三者なのか、
ちがうのか・・・、巧妙に利用した――と判決で言われています」
中嶋「第三者として"利益があった"と公表した、ということですね」
利益がなくお金が動くことは『資本取引』といい
資本取引は利益計上することができません。
中田「株式取引市場・資本市場は、
社会経済・資本主義経済の構造からいうと"根幹"部分なんです。
われわれが生活できるのは、
お金の流れを作っている証券市場があるからこそ――と考えると、
そこの信頼を揺るがすのは
ある意味"大罪"になる、ということなんです」
(右)「株は、ライブドア事件の頃に興味を持っていたので
これは"コワイ、コワイ、コワイ!"と思ってしまったんです」(中嶋)
■実刑判決・・・粉飾決算事件では異例!
日本長期信用銀行 3100億円、山一證券 2700億円・・・
過去の巨額粉飾決算事件は「執行猶予」がついています。
中嶋「堀江さんの何十倍?!堀江さんが一番 少額ですね」
■量刑を決める判断に 4つの要素
「量刑」を決める考え方には2通り
【因果応報】(犯した罪の等価=同じ苦しみを与える)
【更生・教育】の考え方があります。
更生・教育させる手段には、
"社会の中"で更正させるか"刑務所の中"で更正させるか――の判断があり
社会の中で更正させることは適当でない――と判断されると「実刑」に。
この判断には、大きく分けて4つの要素があります。
【1】背景・動機
【2】犯行態様(手段・目的)
【3】犯行によって起きた結果
【4】反省しているか
堀江被告の場合は・・・
【1】かつて「金で買えないものはない」とする発言があり
私利私欲のためではないか
【2】証券市場をだます目的があったのではないか
【3】証券取引市場の信頼が大きく揺らいだのではないか
【4】「無実」の主張、「実刑判決」への異議を唱え続けたため
反省はみられないのではないか
中田「反省しているとは到底いえない、ということであれば
社会の中で更正させる道はない、と(判断された)」
■社会のあり方・・・ここがポイント!
中田「刑事事件も民事事件も、
裁判所が正しいか正しくないか勝敗を決めましょう、
ということなんです。
手続き的正義=社会を構成するルール・システムの中で
"確認"されたものを「正しい」と認めなければ
社会は維持できないんです」
「ただ、本当に正しいかどうか、間違ってはいないのか――
これは各自がきちんと判断をしなければいけない、
ということなんですね」
■宛先:ハガキ 「弁護士中田のビジネスナビゲータ」
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