企業法務を得意とする弁護士の中田光一知さんをパーソナリティに、報道記者経験8年の中嶋美和子さんをアシスタントに迎えて明日のビジネスに役立つ情報をお送りする15分番組です。
法務というと、訴訟や苦情から守ることだけを考えてしまうかもしれませんが、この番組ではもっと積極的なお話を展開していきます。
真面目に攻めの法務を語る中田弁護士と、それをわかりやすく砕いてくれる中島さん、番組では二人の絶妙なトークが展開されます。
中田総合法律事務所 弁護士
昭和34年 東京都生まれ。
東京都立国立高校を経て、
早稲田大学法学部卒業。
平成元年に弁護士登録(第二東京弁護士会)、平成6年に独立開業。
弁護士活動のほか、講演活動、
執筆活動、各メディア出演でも活躍中。
明治学院大学法学部卒
大分県出身
1999年大分朝日放送アナウンサーを経て、2007年よりフリー報道記者としての経験を活かしつつ、今は硬い番組からバラエティまで幅広く出演している。
オフィス北野所属
■2011年5月28日放送分:ひこにゃん訴訟と著作者人格権について■
■ひこにゃん訴訟とは
2007年の「彦根城 築城400年祭」のために
公募によって誕生し、全国的な人気を獲得した
"ゆるキャラ"ひこにゃんをめぐって
原作者と彦根市との間で訴訟に発展。
中田「"著作物"に対する権利と"著作者"の持っている権利は
同じように思えるんだけど違うんです。
この事件の"根本"を理解できるかどうかは、
そこを区別できるか――にかかってるんです」
「著作権」は"著作物"に対する権利であり、『ひこにゃん』は"著作物"。
今回の問題を未然に防ぐには、
原作者と彦根市が
ひこにゃんの使用方法に関する"約束"をきちんと交わすべきでした。
中田「ところが彦根市も原作者も
"著作者"と"著作物"の区別がつかなかったんですね」
■原作者が彦根市に対して
ひこにゃんの使用制限を求める 調停申し立て(2007年11月)
*原作者は「適正なキャラクター管理を怠った」として
著作者人格権(同一性保持権)の侵害を主張
*彦根市は「デザインを公募したイベント会社から
一切の権利を100万円で買い取った」と主張
*彦根市は、原作者が考案した「ひこにゃん」の
正面の絵柄3ポーズのイラストのみ、業者に使用を許可すること――、
原作者に絵本など出版物に限り、
ひこにゃんの類似キャラを認めること――で「合意」した。
中田「クリエーターは出版物だけでしか表現できない――という
制約をつけてしまったんです」
中嶋「(その条件を)飲んだんですか??
自分で作ったキャラクターなのに??どうして?」
中田「そこが今回の紛争の背景にあるんです」
■そっくり「ひこねのよいにゃんこ」登場で訴訟に発展
原作者は新たに『ひこねのよいにゃんこ』を発表。
出版物以外のキャラクターグッズを制作・販売したことで
彦根市は"調停の合意に反する"と指摘し、訴訟へと発展します。
中嶋「
区別がつく人はいないぐらいに 似てますよね」
中田「デザインをちょっと変えて『ひこにゃん』にしなかったのは
調停の合意があって『ひこにゃん』では使えない――という感覚が
あったんじゃないかと思うんです」
「ひこねのよいにゃんこ」の登場は
「ひこにゃん」から見ると同一性保持権(著作者人格権)を侵害します。
中田「原作者が著作権者の彦根市に対し
『ひこにゃんのイメージを変えません』と約束することは
できなくはない――。 そういう内容が『調停』のときに
合意されたのかどうかが 問題になったように思われます」
■地裁と高裁とで異なる判決
彦根市は2010年、「ひこねのよいにゃんこ」関連グッズの販売差し止めの
仮処分を大阪地裁に申し立てますが、退けられ、今年1月に即時抗告。
すると 大阪高裁は「調停の合意」に拘束される――と判断し
販売差し止めを認める仮処分を決定。
中田「そもそも"著作物"に対する権利=「著作権」と
"著作者"の持つ権利=「著作者人格権」とが
彦根市と原作者の間で明確になっていなかったことが発端なんです」
■争いは今も続く・・・
「ひこねのよいにゃんこ」のネーミングで行った商品化・販売活動が
「ひこにゃん」の著作権者たる彦根市に損害を与えたのか――??
中田「このことを争う裁判に、今も実は継続しているんです(※)」
(※)放送日時点
■専門家への相談が大切!
中田「ひこにゃんを制作するときに 専門家の弁護士に頼んで
きちんとした"約束"をしておけば、双方にとってよかったんです。
ところが お互いにその意識がなくて、
問題が長期化して紛争が起きてるわけですね。
最初の根本のところで専門家に相談することが本当に大事なんです」
中嶋「中田先生が最初に担当していたら
全く問題なかった――というのがポイントですね」
中田「こんなことは起きなかったということですね」
■2011年5月21日放送分:ライブドア事件と実刑判決について■
■ライブドア事件とは
2004年9月期のライブドア連結決算で、
実態は3億円の経営赤字だったにもかかわらず
50億円の経常黒字であったとする
虚偽の有価証券報告書を提出した
「証券取引法」(現 金融商品取引法)違反の疑いで
2006年1月、ライブドア 堀江貴文社長(当時)ら4人が逮捕されました。
堀江被告の一審判決は「懲役2年6月」
二審判決、最高裁も控訴を棄却し、実刑が確定。
中田「53億円の粉飾をして50億円の黒字を出した形にして
証券取引所を通じて公開したことが問題になりました」
粉飾決算はなぜ問題なのか・・・?
投資家は、証券取引所や、企業情報として開示された情報を元に
上場された株の売買=投資判断をしますが、
もし、開示された情報が間違っていたら?
中田「3億の赤字なのか、50億の黒字なのか、
投資する人には ものすごい大きな問題でしょ。
だから、正しい情報を正しい形で開示しなければ
罰則もあるという法律なんです」
■第三者性が問われた投資事業組合
ライブドア事件では"投資事業組合"が絡んでいる点が問題となりました。
「投資組合」が株を売ることでお金を得ると、
投資組合に出資した「会社」には配当を出る・・・
これは「会社」にとっては利益??
投資組合が会社との関係で"第三者性"が確保されていれば、
"外から利益が入ってきた"として「利益計上できる」――。
しかし「投資組合」が「会社そのもの」と"一体"であれば(第三者でなければ)
傘下(グループ内)のお金の移動と考えられます。
中田「この裁判では、投資組合が本当に第三者なのか、
ちがうのか・・・、巧妙に利用した――と判決で言われています」
中嶋「第三者として"利益があった"と公表した、ということですね」
利益がなくお金が動くことは『資本取引』といい
資本取引は利益計上することができません。
中田「株式取引市場・資本市場は、
社会経済・資本主義経済の構造からいうと"根幹"部分なんです。
われわれが生活できるのは、
お金の流れを作っている証券市場があるからこそ――と考えると、
そこの信頼を揺るがすのは
ある意味"大罪"になる、ということなんです」
(右)「株は、ライブドア事件の頃に興味を持っていたので
これは"コワイ、コワイ、コワイ!"と思ってしまったんです」(中嶋)
■実刑判決・・・粉飾決算事件では異例!
日本長期信用銀行 3100億円、山一證券 2700億円・・・
過去の巨額粉飾決算事件は「執行猶予」がついています。
中嶋「堀江さんの何十倍?!堀江さんが一番 少額ですね」
■量刑を決める判断に 4つの要素
「量刑」を決める考え方には2通り
【因果応報】(犯した罪の等価=同じ苦しみを与える)
【更生・教育】の考え方があります。
更生・教育させる手段には、
"社会の中"で更正させるか"刑務所の中"で更正させるか――の判断があり
社会の中で更正させることは適当でない――と判断されると「実刑」に。
この判断には、大きく分けて4つの要素があります。
【1】背景・動機
【2】犯行態様(手段・目的)
【3】犯行によって起きた結果
【4】反省しているか
堀江被告の場合は・・・
【1】かつて「金で買えないものはない」とする発言があり
私利私欲のためではないか
【2】証券市場をだます目的があったのではないか
【3】証券取引市場の信頼が大きく揺らいだのではないか
【4】「無実」の主張、「実刑判決」への異議を唱え続けたため
反省はみられないのではないか
中田「反省しているとは到底いえない、ということであれば
社会の中で更正させる道はない、と(判断された)」
■社会のあり方・・・ここがポイント!
中田「刑事事件も民事事件も、
裁判所が正しいか正しくないか勝敗を決めましょう、
ということなんです。
手続き的正義=社会を構成するルール・システムの中で
"確認"されたものを「正しい」と認めなければ
社会は維持できないんです」
「ただ、本当に正しいかどうか、間違ってはいないのか――
これは各自がきちんと判断をしなければいけない、
ということなんですね」
■宛先:ハガキ 「弁護士中田のビジネスナビゲータ」
■2011年5月14日放送分:ゲスト 朝日産業 社長 藤井秀三郎さん(2)■
先週に続いて、朝日産業 株式会社 社長の
藤井秀三郎さんにお話を伺いました。
■ポップコーンマシーン
「膨らむものはいいな、これは面白い!」
電動綿菓子製造機に続いて早くから製造を手掛けられ、
現在も国内トップシェアを誇る製品が
劇場での映画鑑賞のおともとしてもおなじみ――
ポップコーンをつくる業務用機械。
近年はキャラメル味の人気が高まる一方、
お客様の要望がきっかけとなって、
チーズバター味、カレー味、梅がつお味――といった新たな種類も登場。
味の種類の増加と比例して、
ポップコーンマシーンや材料の需要も高まり、
スーパー、商店街といった大勢の人が集まる場所には、
綿菓子製造機とあわせて設置されることが多いそうです。
■8トラック式ジュークボックス
現在、綿菓子製造機・ポップコーンマシーンの製造が
「99%」を占める――という朝日産業。
過去には、昭和40年代に8トラック式ジュークボックスを製造。
これは、
喫茶店のジュークボックス(アメリカ製)に興味を示した藤井さんが
カーオーディオに使われていた8トラックをヒントに
「箱の中にカセットを入れたらジュークボックスになる」と製品化。
人気商品になりましたが、
人気が高まるにつれ、修理対応が困難になったことで撤退を決意。
藤井「取引先の営業部長が『もったいない、オレたちでつくるよ』って
スポンサーを探して作った会社が、今、日本一になっちゃった」
中嶋「えぇ、そうなんですか!?」
■2011年5月7日放送分:ゲスト 朝日産業 社長 藤井秀三郎さん■
『弁護士中田のビジネスナビゲータ』は
「ビジネス」の世界で今、起きている出来事について
中田総合法律事務所の弁護士・
「法律」の観点から わかりやすく解説するほか
時には 企業経営に携わっている方をゲストにお招きして
ビジネスの最前線の話題をお聴きします。
5月7日は、番組開始以来初めてゲストをお招きしての放送。
■朝日産業 株式会社について
日本で初めて電動綿菓子製造機を製造
ポップコーンマシーン 国内トップシェア
従業員数:アルバイトを含め10人
現在、電動綿菓子製造機の生産数は年間1500~1600台。
■藤井秀三郎さんプロフィール
1926年(大正15年)2月生まれ(85歳)
戦後、GHQに務めたのち、貿易会社、旅行会社に勤務。
1962年(昭和37年)
アメリカの おもちゃ売り場で綿菓子をつくる機械
cotton candy machineを目にしたことから
誰でも簡単に綿菓子を作ることができる
家庭用 電動綿菓子製造機の日本国内での製造を
家電メーカーに依頼し、藤井さんが販売を担当。
(実用新案権取得)
その後、朝日産業は業務用機器の製造にシフト。
中田「最初は家庭用の小さなものを作られていたんですね」
藤井「徐々に大きいものを作って、50年続いています」
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