企業法務を得意とする弁護士の中田光一知さんをパーソナリティに、報道記者経験8年の中嶋美和子さんをアシスタントに迎えて明日のビジネスに役立つ情報をお送りする15分番組です。
法務というと、訴訟や苦情から守ることだけを考えてしまうかもしれませんが、この番組ではもっと積極的なお話を展開していきます。
真面目に攻めの法務を語る中田弁護士と、それをわかりやすく砕いてくれる中島さん、番組では二人の絶妙なトークが展開されます。
中田総合法律事務所 弁護士
昭和34年 東京都生まれ。
東京都立国立高校を経て、
早稲田大学法学部卒業。
平成元年に弁護士登録(第二東京弁護士会)、平成6年に独立開業。
弁護士活動のほか、講演活動、
執筆活動、各メディア出演でも活躍中。
明治学院大学法学部卒
大分県出身
1999年大分朝日放送アナウンサーを経て、2007年よりフリー報道記者としての経験を活かしつつ、今は硬い番組からバラエティまで幅広く出演している。
オフィス北野所属
■2011年9月10日放送分:アメリカ経済の不安と 止まらない"円高"■
■最近の円高の原因は アメリカ、ヨーロッパの金融不安
『円高』とは――外国の通貨に比べて円が高いこと。
最近の円高は「円が強くなった」のではなく
「ほかの通貨が弱くなった」と考えられます。
なぜか??
その発端は、2007年 アメリカでサムプライムローン問題といわれています。
世界を引っ張るアメリカ経済が金融不安の中でもがいている現状、
そして世界同時不況。
一方、『ユーロ経済圏』が形成されたヨーロッパに目を向けると
多くの国がありながら、
通貨を発行する権利は『ユーロ』という共通体であることから、
1国の中では、通貨発行量を調整することができません。
中田「1国経済の中で調整ができないので、
一気に"債務超過"みたいなことが起きてしまう。
ギリシャ、スペインの問題があり
ユーロ圏内も経済的に複雑な状況の中でもがいている」
『ドル』『ユーロ』と比較した場合『円』は相対的に"安全資産"と見られています。
■円は高いべきか、安いべきか
中田「円を持って資産を買う場合、円が高いほうがよく
円を持って売るんだったら、円はやすいほうが売りやすい――
ということにすぎないんです」
「円高」の場合『輸入産業』は恩恵を受けることができますが
『輸出産業』は打撃を受けます。
また『経済』は
実際に行われている経済活動――"実体経済"だけで動いているのではなく、
"心理"で動いている側面があることも忘れてはいけません。
中田「円高によるダメージが大きく見えるという意味では、
日本経済に占める輸出産業の割合よりも
日本経済に対する影響は、実は大きく見えているんですね」
■為替介入による効果は?
政府、日銀は、円高を止めるために様々な"策"を講じています。
8月4日には、外国為替市場で「円売りドル買い」の為替介入に踏み切りました。
中田「『円』を売って『ドル』を買うということは
円とドルとの相対的な関係の中で、
"円を下げてドルを上げよう"としているわけです。
だけど『円高』が いいか悪いかは、実は一面的には決められない――。
いいも悪いもないんです」
自由主義経済の中では、相場は自由に動くもの。
人為的・政策的に、ある相場のところで均衡を保つことが
はたして いいのかどうか――という議論もあります。
また、流通している通貨の量に比べて、
"介入できる量"が小さいことから、大きな効果を期待できないという側面もあります。
中嶋「所詮、介入したところで、それほど変動がないということですね」
世界中の中央銀行、財務省が同じ方向を向いて動く『協調介入』の場合は、
"それなりの量"を確保できるため
"それなりの効果"が期待できますが、
日本一国での為替介入では大きな効果を呼ぶことは困難といえそうです。
■1千億ドルの『円高対応緊急基金』の創設
8月24日「円高対応緊急ファシリティ」の創設が発表されました。
中田「円高のメリットを生かしながら、
政府資金を使って海外投資を促したり、輸出産業を助成したりするんです」
日本企業による海外企業の買収、
海外の資源・エネルギーを買うにも「円高」の今がチャンス。
日本企業による円の外貨転換を促し、円高の是正につなげるとともに、
輸出産業で苦しむ中小企業への支援を行います。
円をドルに換える動きを増やしていく=円は売られ「円安」に――。
中田「微調整を繰り返しながら景気を回復しなければいけない
非常に綱渡り的な政策をとらなければいけない――
ということになっているわけです。
"自由"ということは"リスク"を伴います。
そうして自然に調和していく間には"痛み"を伴うんですね」
■"裏と表"を冷静に見つめ、進むべき道を探る
中田「『円高』がいいとか悪いとかいう議論がありますが、
何事にも"裏と表"あるんです。
人にとって いいことは、自分にとって悪いということもある。
一概に『いいこと・悪いこと』と決めつけないで、
どういうことが起きているのか、
冷静に考えた方が、自分の行く道は正しく見えてくると思います」
■2011年9月3日放送分:ゲスト 佐々木恒夫さん■
先週に引き続き、
東レ経営研究所 特別顧問の佐々木恒夫さんに
40年のサラリーマン生活で培われた"ビジネスの極意"を伺いました。
■営業の本質は『いかに知るか』
『営業』の力を発揮するために必要なこと――
それは"いかに売るか"よりも"いかに知るか"。
佐々木「事実がなんであるかを掴むことが営業の一番の力だと思います」
■『礼儀正しさは最大の攻撃力』
佐々木「私は部下に『礼儀正しさ一本で東レの役員になれる』と言ってきました。
『役員』とは『リーダー』――。
『リーダー』は幼稚園で教えてもらったことをきちんとできる人」
*あいさつをする
*みんなと仲良く遊ぶ
*仲間外れを作らない
*うそをつかない
*間違ったことをしたら勇気をもって謝る
佐々木「こういうことができる社会人はほとんどいないんです。
『礼儀正しさ』は営業に限らず、
ビジネスマンとして最も必要なことではないかな、と思っています」
■ビジネスは予測のゲーム
佐々木常夫さんが実践していた部下の指導法を伺いました。
◆"担当事業の予算がどれだけ達成できるか"
その理由とあわせて予測をさせる――。
佐々木「1年たって(予測と異なれば)前提となった理由が間違ってるわけです。
すると、なぜ間違えたのかわかる。
これを繰り返すとだんだん当たるようになるんです」
■会議を半減 残業は大幅短縮
「会社はムダの塊――会議はその象徴」と語る佐々木さんは
課長就任後、会議を半分に減らし、継続する会議も時間を半分に。
佐々木「事前に、簡潔な資料の提出を義務付けて、
読んできたことを前提に、いきなり議論から始める。
会議を減らしたら、働く時間はものすごく短くなります」
労働時間の短縮は、残業時間の減少にも直結――。
自分の仕事の計画――どの仕事に何時間かかるか――の予測を命じ、
これを習慣化することで予測の精度が向上。
佐々木「繰り返すと、計画と実績があってくる。
あってくるということは残業が減っていくということです」
こうして「東レ経営研究所」時代には
月平均「70時間」の残業時間は「20時間」へと大幅な短縮に成功。
■企業法務に関する苦労
佐々木常夫さんが仕事の面での苦労された経験としてご紹介くださったのは
アメリカでの製品の"ダンピング"(ダンピング関税引き下げ交渉)と
"特許権侵害の訴訟"。
佐々木「特許に引っかかっていない――と証明するのに半年くらい苦労しました。
最後は和解になったんですけど、大変な目にあったことがあります」
■2週にわたり佐々木常夫さんにお話を伺って
中田「僕の生き方にもすごく影響あるお話をたくさん伺いました。
僕もよく人に話していて、
仕事だけでなく、3時間かかることを1時間で効率よくする。
できるだけ短い時間で達成する。
そうすれば、考えてみれば、3倍の人生を送れるんですね。
佐々木さんが40年間ビジネスマンをされていた――、
おそらく人の3倍は生きているから120年生きてきたことと一緒。
すごいなと思いました」
中嶋「そんなになるわけですか!?ギネスブックものですね」
佐々木常夫さんに伺ったお話の一部は
『「本物の営業マン」の話をしよう』(PHP研究所/800円)に
詳しく掲載されています。
佐々木常夫さんの活動について詳しくは
佐々木常夫 オフィシャルWEBサイトでご確認ください。
『弁護士中田のビジネスナビゲータ』は
「ビジネス」の世界で今、起きている出来事について
中田総合法律事務所の弁護士・
「法律」の観点から わかりやすく解説するほか
時には 企業経営に携わっている方をゲストにお招きして
ビジネスの最前線の話題をお聴きします。
この日は 東レ経営研究所 特別顧問の佐々木恒夫さんをゲストにお招きしました。
◆佐々木恒夫さん プロフィール◆
1944年、秋田市出身、66歳。
東京大学 経済学部卒業後「東レ」入社。
2001年、同期のトップで取締役就任。
2003年「東レ経営研究所」社長を経て、2010年、特別顧問に就任。
東レ時代は、経営破綻した会社の再建、様々な事業改革に取り組む。
著書は『部下を定時に帰す仕事術』『そうか、君は課長になったのか』
『働く君に贈る25の言葉』なと多数。
最新著書は『「本物の営業マン」の話をしよう』(2011年5月)
PHP研究所から800円(税別)で発売され、早くもベストセラー。
中田「『東レ』は化学繊維のメーカーとして、日本の経済の牽引車のような、
学生の頃『就職したい企業』トップにずっと名前が出てた会社ですね」
中嶋「水着のキャンペーンガールで有名なタレントさんを排出されてますよね」
佐々木恒夫さんは2010年、サラリーマン生活を"卒業"。
佐々木「"引退"というと隠居生活に入る感じですけど、
私の場合はやることが山ほどありますので、
"会社生活は卒業した"――ということですね」
■破綻企業の経営再建
合繊メーカーが取引をしている企業が、500億円の含み損を抱える経営危機に――。
倒産すれば、連鎖倒産する企業が200社にのぼる――と考えられ、
通産大臣が合繊メーカーに支援を要請。
東レからは14名が出向。
その中で最も若いメンバーが当時32歳の佐々木恒夫さんでした。
◆再建法
*資産売却(不動産、有価証券などの売却)
*固定費削減 (要員の削減)
*事業の選択と集中 (関連会社は3分の1を整理、本体の事業は半分に)
佐々木さんの出向期間は3年半。
佐々木「平日は深夜0時まで、土日も出勤し、
月の残業時間は『200時間』を超えました。
経営のセオリー通りやれば、どの会社でも黒字にはなります」
■経営規模を左右する"消費者との接点"
『選ぶ事業によって経営規模が決まる』と語る佐々木恒夫さん。
「自動車」「家電」メーカー業界トップの年間売上げ10兆円規模に対し
『東レ』は約1兆5千億円。
佐々木恒夫さんは、こうした差が生まれた背景に
自動車・家電メーカーが消費者と向き合って事業を展開しているのに対して
"原料"を製造販売する『繊維メーカー』の『東レ』が向き合う対象は、
糸、綿、織物...の原料を加工する企業である点を指摘。
合繊メーカーは、消費者と接点を持つ道を歩まず
高分子化学の分野(プラスチック、ケミカル、炭素繊維など)へと進出し、
取扱い商品の幅を広げることで事業を拡大。
佐々木 「"末端"(消費者)に行かず"横"に展開して、それはそれで成功した。
『東レ』はたった1兆5千億円しかないんですけど
収益性は抜群でしたから。企業としてはそれでいいんです」
■ゲスト 佐々木恒夫さんの回 1週目を終えて
中田「『テトロン』という『東レ』と『帝人』で共同開発した製品があります。
『東レ』は必ずしも消費者との接点を持たなかった――
というお話があったけど
我々の身近なところに根深く残っていくものを作っていて、
そういう会社でトップを張られていた佐々木さんのお話――
来週も楽しみですね」
この日 佐々木常夫さんに伺ったお話の一部は
『「本物の営業マン」の話をしよう』(PHP研究所/800円)に
詳しく掲載されています。
佐々木常夫さんの活動について詳しくは
佐々木常夫 オフィシャルWEBサイトでご確認ください。
■2011年8月20日放送分:焼き肉 集団食中毒事件とコンプライアンス■
今年4月、富山、福井、横浜の3店舗で食事をした男女4人が死亡。
「病原性大腸菌」による食中毒患者は100人を超える集団食中毒事件が発生。
「焼肉酒屋えびす」を経営する「フーズ・フォーラス」は
仕入れた肉への「細菌検査」を2年間 実施しなかったこと、
衛生管理の認識が甘かったことを認めました。
■集団食中毒事件発生の原因は??
中嶋「今回の事件の最大の原因はなんだったんでしょうか?」
中田「国民の健康を保護・維持するのは国、行政の役割なんです。
フーズ・フォーラスの経営体質にもあったと思います」、
今回の事件に関する一連の報道が正しい場合、
肉の表面を削り取る"トリミング"作業に関して、
卸業者との間で、
トリミングを卸業者が行う契約があったとされています。
中田「仕入れをしたら、一切何もしない――
食肉として提供する肉を、切って、
そのまま出してしまう――ということをしていたようです。
これは国の衛生基準に照らしても手抜きです」
しかし、国の衛生基準は、行政指導を行うための根拠にはなりますが、
法的拘束力はなく、罰則もありません。
中田「違反をしても、そのことによって罰則がある――
ということではなかったところに問題があったんですね」
■フーズ・フォーラス社の今後は?
「焼肉酒家えびす」の運営会社「フーズ・フォーラス」は、
当初、「被害者への賠償のため」として営業再開を模索していましたが、
「営業再開は難しい」として取締役以外の社員およそ90人を解雇し、
会社を分割した上での新会社設立を検討。
フーズ・フォーラス社自体は解散、
新会社は、被害者への賠償問題で窓口になるとみられます。
中田「こういうことが一度起こると、第一に営業が立ち行かなくなる。
今回のように亡くなったり入院したりする人が出て
"傷害"となると、刑事上の責任を問われることもあり得ます」
■企業が、社会が、"守るべきもの"とは?
トリミングをしなかった
衛生管理をしなかった、衛生基準を守らなかったことと
食中毒に因果関係があれば、なんらかの責任をとらなければならない。
企業が生き延びるために(今回のような形で)"利益"を追求して、
その結果、企業が倒れてしまう――ということになる。
"守るべきもの"は何なのか――基本にかえって考えた方がいい」
『ユッケ』を例にした場合、
食べることで数パーセントのリスクがあるが
提供者は、安全面での一定の基準を設け、その基準に則って提供し、
消費者は、リスクがあることを理解して食べる――。
このように、選択肢は広げながら、
国民の健康・安全のために一定の基準を作る必要があるでしょう。
今年5月、東京都が都内の焼き肉店や食肉処理業者などを調査した結果
約7割の店舗が、
厚生労働省の衛生基準に反する取り扱いをしていたことが明らかになりました。
また、厚労省は、
食品衛生法の衛生基準を満たさない生肉の流通販売に「罰則規定」を設け、
合わせて「抜き打ち検査」も行い"行政規制を厳格にする"ことを決めました。
中田「なんでも『禁止』にすると"何もしないでください"となって、
行きすぎると問題で、バランスは必要ですが、
我々市民一人ひとりが、自分を守るための知識を持っていることが
一番大事で、それを守るために国・自治体の制度がある。
もちろん企業も その一員として、
そういったものを守っていく姿勢を持って経営をしていく――」
中嶋「『営業停止』とか罰則がなかったから基準を守ってなかったんですかね」
■コンプライアンスの基本の考え
中田「利益を追求するために"手抜き"をして、
結局のところ、利益どころか企業が死んでしまう。
『コンプライアンス』の基本は"自分がされたらどうか"ということ。
自分だけ良ければいい――というものではなくて
お互いのことを"自分のこと"として考えていくことが大事です」
■2011年8月13日放送分:中国版新幹線と日本の知財戦略■
7月23日、中国・浙江省で高速鉄道が衝突・脱線する事故が発生。
中国の「高速鉄道」は、6月30日に北京と上海を最短4時間48分で結ぶ
"中国版新幹線"「北京・上海高速鉄道」が開業したばかり。
この高速鉄道には、日本やドイツの企業が技術を提供していますが
中国は、車両の開発は"独自技術"と主張し、
アメリカで特許の申請をする――と伝えられています。
報道が一部がありました。
その報道が真実だとすると"お人よし"といえばお人よし。
相手とパートナーとして信用する気持ちは大事だけど、
ビジネスはそれだけではなくて、
ガードするところはしっかりガードしないといけない。
相手に付け込まれるような"雰囲気"を醸し出してはいけないんですね」
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