今回の講義は、日本のすごい開発者をお呼びして、世界に進出した大ヒットツールに隠された製作秘話を学びます。
その大ヒットツールとは、複雑なデータを一瞬で読み取ってしまう"QRコード"!
講師は、QRコードの生みの親・株式会社デンソーウェーブの原昌宏さんです。
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【デンソーウェーブとはどんな会社?】
2001年に、自動車の部品を作っている会社「デンソー」から分社化してできた会社。愛知県に本社がある。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【そもそも"QRコード"とは?】
QRはクイック レスポンスの略。四隅のうちの三隅に四角形があるのが特徴。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【QRコードが出来上がるまで】
もともとデンソーの製造工場の現場では部品をバーコードで管理していた。だが、バーコードを10個ほど並べて読ませるなど非常に作業効率が悪く、「バーコードより多くの情報を盛り込めるコードを作ってほしい」という要望が出た。それに応えるために、1992年から原さんによって新たなコードの開発がスタート。2年の開発期間を経て1994年に完成した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【ヒントは囲碁!?】
昼休憩の時間中に社内で原さんが打っていた囲碁。ある時、囲碁の格子状に白黒並べることで、多くの情報が入ると思いついた。バーコードは、バーが太いか細いかの幅情報しか入れられないが、縦横両方使えば、より多くの情報を入れられると気づいた。それによって、バーコードの約200倍、数字でいうと7089文字、漢字だとA41枚分・1817文字の情報を入れ込めるようになった。また、情報を復元できる機能をつけたことによって、汚れや破損にも強くなった。最大30%の面積が汚れても読み取ることができる。
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【難しかったのは読み込みの速さ!その解決策が三隅にある四角形】
QRコードはカメラで読み込む。周りの文字や図形なども映りこむので、コードだけを抽出するのが非常に難しく、時間がかかった。そこで、特殊なマーク=三隅にある正方形のマークをつけることで、他の文字と素早く区別をつけることができると気づいた。この四角形は、白黒の比率が1:1:3:1:1になっている。この比率は、他の文字や図形の中で極端に出現率が低いもの。だからこの比率を調べることで、コードがここにあるよ、という目印になる。また、三隅にこの四角形を置くことで、2辺が確定できるので、どの角度からでも読み取ることができる。
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【なぜ特許使用料をオープンに?】
デンソーウェーブは、特許をオープンにし、規格化された技術に対して特許権を行使しないと宣言している。これには、まずは「自分の作ったものをみんなに使ってもらいたい」という思いがあった。また、特許をとっていたら、競争が生まれ、コードが氾濫して今のコードビジネスは成り立っていなかったのではないかと思う。
特許をオープンにしたことで、世界中に広まったのでは。今では、地下鉄のホームドアの開閉など、意外なところにもQRコードは使われている。
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【QRコードのこれから】
現在、暗号機能を搭載した二層構造のものやコピー機で複製できない不正防止の機能を加えたものなど、新たなQRコードを開発している。今はテキスト情報しか入れられないが、今後は、映像や音楽など入れられる情報を増やすことで、さらに色々な用途で使えるようにしたい。また、災害が多い日本において、レントゲン写真や心電図などの情報をQRコード化して持っておくことで、いつどこで倒れても適切な治療を受けられるようにして、1人でも多くの人の命を救いたい。
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普段の生活の中で、今や当たり前に使っているQRコード。こんな製作秘話があったんだ...!と驚きました。そして、QRコードで命を救うところまで考えていらっしゃるなんて...!お話を聞いていて、日本の技術はすごいんだ!と改めて誇りに思うと共に、ワクワクしてきました。QRコードのさらなる進化を楽しみにしています!
そして、リスナープレゼントとして原さんから頂いた本「QRコードの奇跡」。皆様、たくさんのご応募ありがとうございました!
坂口愛美