今回の講師は、元中学・高校の美術教師、末永幸歩さんです。
今、書店では末永さんの著書『13歳からのアート思考』が話題になっています。
「あの有名な美術作品は何が評価されているの?」など、今さら聞けないアートの疑問、そしてモノの見方が一変する思考方法を学びました!
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【本の構成】
20世紀に生まれた6つのアート作品を紹介。その作品を作ったアーティストたちが、どうやって自分なりの答えを導き出していったのか。その思考過程を体験していくという本。
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【取り上げた6人のアーティスト】
アンリ・マティス、パブロ・ピカソ、ワシリー・カンディンスキー、マルセル・デュシャン、ジャクソン・ポロック、アンディー・ウォーホル
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【なぜ20世紀の作品を取り上げたのか】
長い歴史のなかでも、20世紀がアートにとって激動の時代。アーティストたちが、これまでのアートの常識やルールに素朴な疑問を投げかけて、それらを打ち壊していった。
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【なぜ"13歳から"?】
小学校から中学校にあがるのが13歳。小学校の図工は人気教科だが、中学校の美術は人気が急落して、その下げ幅が他の教科と比べて第1位。ここに何かあるんじゃないかということで、『13歳からのアート思考』とタイトルをつけた。
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【末永先生の授業】
本に書いてあるような内容を実際に中学生、高校生に向けて授業で実践している。たとえば「素晴らしい作品だからしっかり鑑賞しよう」ではなく、「ピカソにダメ出ししてみよう」と提示。すると、美術に苦手意識を持っている子どもたちが、面白がってダメ出しをしていく。その結果、誰よりも絵をよく見ている。他の美術の先生たちからは「何をやっているんですか」と言われたが、子どもたちの間では好評。「美術が苦手」と言う子がいなくなり、休み時間にも廊下でアートの話やディスカッションをする姿が見られるようになった。
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【アウトプットを大切に】
鑑賞するときに大切なのが「アウトプット」。まずは見て気が付いたこと、感じたことを声に出したり紙に書いてみる。頭の中で考えるだけでなくアウトプットするのがポイント。
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【特別授業:アンリ・マティス「緑のすじのあるマティス夫人の肖像」】
14世紀に西洋絵画が花開いた。その時の画家は、今の「アーティスト」というより「職人」に近い仕事。宗教画や肖像画を描いていた。「目に映る通りに描かれた絵」が素晴らしい絵、アートのゴールとされていた。しかし19世紀後半にカメラが登場し、絵画で目に映るものをそのまま描く必要がなくなった。そんな中、アーティストたちが「カメラにできないこと」「アートの意味」「アートにしかできないこと」について考えるようになる。そうして描かれたのが、アンリ・マティスの「緑のすじのあるマティス夫人の肖像」だった。目に映るものを再現する、という目的からあえて離れて、色を自由に使うというチャレンジをこの絵で実践してみたのだと考えられる。
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先生の授業を聞いて、はっと目が覚めたような衝撃を受けました!その後「13歳からのアート思考」も読ませて頂きましたが、ページをめくるたびに新たな発見があってとても面白かったです!自分のモノの見方、考え方が凝り固まっていたなぁと実感しました。末永先生の授業や本は「アート」が入り口になっていますが、そこから学べることは、仕事や人生など、何にでもあてはまると思います。激動の時代だからこそ、他人の考え方に流されないように、自分のものさしをしっかり持って生きていきたいと感じました!
by坂口愛美