今回は明治大学政治経済学部准教授の飯田泰之さんに
新型コロナで先行き不透明な日本経済について、
リスナーのみなさんからの質問に答える方式でお話いただきました。
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【Q.総額108兆円規模の緊急経済対策はどうなったの?】
・108兆円という額は第一次補正予算案の緊急経済対策の事業規模。
(※一律一人10万円支給する特別定額給付金の実施によって、最終的には117兆円となった。)
ちなみに、108兆円というのは事業規模の総額であって、実際に政府が財政支出する金額ではない。
企業に対する納税や社会保険料の支払い猶予分や財政投融資なども含まれた額。
「真水」と呼ばれる政府が実際に支出する金額は、第二次補正予算の分を合わせると58兆円ほど。
これは日本のGDPの1割にあたり、コロナが来年の春に収まるとしたら妥当な額。
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【Q.「GoToトラベルキャンペーン」という政策はどう思う?】(※7月16日収録時点のご意見)
・観光関連産業への被害はかなり深刻なので、完全に中止するのは良くないと思っている。
・直接給付は不可能。会社の規模などにより必要な額が違い過ぎて、金額を決めるのは難しい。
・ただ、現在の形で実行するのは愚か。例えば、第1週は都道府県内のみ、8月に入ったら隣の県まで、
お盆過ぎから全国OKのように、感染拡大状況をみながら順次広げていくのはどうか。
都道府県内のみとすることで、地元の良いところを再発見できるという利点もある。
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【Q.先進国は貯蓄率が上がっているという記事を見た。今は貯蓄?消費?投資するなら何?】
・5月の家計調査を見ると勤労者世帯は給付金により収入が10%アップしているが、
消費は16%減っている。つまり給付金を貯蓄に回しているということ。
さらにこれまで「何となく」買っていたものを買わなくなっているので消費が減っている。
・将来への不安から貯蓄してしまうが、「自己投資」に使ってみてはどうか。
今までやったことないことをやる、聞いたことのないアーティストの曲を聞く、本を読むなど
新しい楽しみのための消費は自分にとっての投資となる。
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【Q.日経平均株価が急落しないのはなぜ?私たちの生活は苦しいのに不況ではないの?】
・株価は企業の利益で決まる。時に、経済全体の調子と企業の利益が一致しない場合がある。
・コロナショックの規模が分からなかった3月は株価は大幅に下がったが、
むしろ死者や感染者が増えていった4月には株式市場は回復。
これはコロナの影響を受ける範囲が分かるようになってきたため。
・死者と重傷者の割合が下がっている、亡くなる方の年齢は平均寿命と同じくらいというデータなどから、
今後、若い層の経済はある程度戻っていくと予想されたため、株価が好調という現実があるのではないか。
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【Q.コロナの影響を受けない仕事や業種は?(※今後の職業選択に迷う高校2年生からの質問)】
・大学生への進路指導では「1つの会社に全人生を預けるな」と言っている。
特に20代は、いざという時に転職できるスキルと人脈をどうやって育てるかが大事。
・過去を振り返ると大人気だった企業が倒産していることもある。しかし、スキルと人脈を持っていた人は
上手に転職している。2、3回は転職するということを前提に考えて備えるとよい。
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【Q.新型コロナの対策費に充てるため多くの自治体が自治体の貯金にあたる財政調整基金を取り崩し、
総残高が前年の58%減ったという記事を目にした。不足する財源は今後どう補填していくの?】
・現在、2兆円ほど特別給付金という形で地方に支援することになっているが、足りないと思う。
・財政調整基金は、各都道府県が都道府県内だけの不測の事態となった時に対応するための貯金。
コロナはもっと大きい規模の話なので財政調整基金で対応するのは無理がある。
・コロナの影響が長引く可能性があるので、国が対応しなければならない。3次補正は避けては通れない。
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今回も分かりやすい飯田さんのお話、そして今回もリクエスト曲は斉藤和義さんの曲。
ブレないところも素敵です。いつもありがとうございます。
by長麻未