「緊急地震速報」は、どんな地震でも揺れる前に情報が届けられ、正しく揺れの大きさがわかるオールマイティの情報ではありません。秒を争う短い時間にデータを処理し伝達することは、おのずから限界があります。
- 伝達時間の限界
- 「緊急地震速報」は、全国に約2200箇所に設置された地震計のうち、震源に近い地震計で感じた地震波を解析し、地震の規模(マグニチュード)、震源、各地の到達震度を推定します。
このうち、1箇所の地震計では、落雷や近くの発破、大きな動物の移動などの揺れを地震と間違えてデータを送ることがあります。これを防ぐために、気象庁では2箇所以上の地震計が感じた地震のみを速報として伝達することにしています。この2箇所以上の揺れを感知して「緊急地震速報」を発するまでに、これまでの試験運用では平均7秒程度の時間を要しています。
更に、これをラジオ・テレビで放送するためには、解析するために約3秒の時間が必要です。合わせて、平均的には10秒程度の時間が必要です。地震の強い揺れ(S波 主要動)が伝わる速度は地質にもよりますが秒速約4キロですので、震源地から半径40キロ以内では「緊急地震速報」は間に合わないことになります。
これと反対に、震源から離れるほど「緊急地震速報」伝達後の猶予時間は長くなりますが、揺れは小さくなり「緊急地震速報」が地震災害の軽減には役に立たないことになります。
(気象庁の地震計が約200箇所、独立行政法人防災科学研究所の地震計が約800箇所のあわせて約1000箇所の地震計があります)
- 推定震度の誤差・誤報
- 「緊急地震速報」は、既に「地震が起きた」という「事実」と、その揺れが「どのくらいの強さで伝わるか」という「推測」の二つが合わされた「速報」です。
(1)の項で、2箇所以上の地震計で感知した時発せられるとしましたが、この時点では絶対的にデータ不足です。
しかし、データがより多く入るのを待って、地震発生から60秒後に「緊急地震速報」が出されたのでは強い揺れで被害が起きそうな場所では、既に揺れがおさまっているかも知れません。ですから、少ないデータで「速報」を出さざるを得ません。 そうすると、現状では、ある程度の誤差があるのはやむを得ません。将来的には、地震計の数を増やしたり、コンピューターの解析性能を上げるなどによって、少しづつ改善されることはあるでしょう。
なお、これまでの「試験運用」でのデータでは、予測震度と実際の震度が一致したケースが37%、これを含む震度が上下1階級以内のときが83%で、17%が「はずれ」でした。
もう一つ、気象庁のコンピューターが短時間にデータを処理し、回線を伝ってそれぞれの機関に伝達、それを放送局で自動放送システムに載せるまでの間に「誤作動」の可能性もあります。時間的余裕があれば未然に防ぐとこと可能ですが、秒単位での処理・伝達ですので、「誤報」ということも考えられます。