第5回かもめ亭レポート

<『五貫裁き』を演じた神田ひまわりさん>


小学館・文化放送の共催する『浜松町かもめ亭』。
第5回公演が5月18日(金)、文化放送メディアプラスホールで開かれました。
今回は
『平林』柳家ろべえ
『七段目』三遊亭司
『五貫裁き』神田ひまわり。
仲入りを挟んで『小猿七之助』 立川談春
という番組。

ろべえさんは柳家喜多八門下の新進二つ目さん。「師匠が喜多八なので『東海道中膝栗毛』の弥次さん喜多さんに因んで弥次郎兵衛になるところ、 弥次喜多でオレが後になるのは嫌だと、弥次郎兵衛の下だけ取って“ろべえ”に」と芸名の由来で笑わせてから、 字の読めない小僧さんが訪ね先の名前が分からなくなる『平林』へ。読み方の間違いで、「平林」の次を分解して「一、八、十の木木(もくもく)」 と読む辺り、「米」の字を分解した桂米朝師匠の俳名「八十八(やそはち)」を思い出させます。 ろべえさんは師匠によく似た手堅い口調で座を固めます。特に噺の途中に登場する「たばこ屋」は師匠ソックリ!

続く三遊亭司さんは三遊亭歌司門下で、「昔から稽古事が好きで、笛・日舞・小唄・三味線を習ってます」という洒脱な二つ目さん。 「小唄は高校生時代からで、“びんのほつれは枕の咎よ♪〜”と歌ってる高校生でした」と笑わせ、 芝居に夢中な若旦那がひと騒動起こす『七段目』へ。若き日の春風亭小朝師匠の十八番ですが、なんと司さん、 林家正雀師匠に教わって本日がネタ卸しとは良い度胸!そのせいか、ちとトチリもありましたが、 歌舞伎座の五月公演・團菊祭の話題を若旦那がしたり、家の階段を見た若旦那が『蒲田行進曲』を思い出すなど新たなクスグリも加えて熱演! 『忠臣蔵七段目』等、様々な芝居を演じる展開を、世話物風の口調で楽しく演じました。

仲入り前はかもめ亭2度目の登場、柳亭痴楽門下で芸術協会所属の二つ目講釈師・神田ひまわりさん。 出し物の『五貫裁き』は大岡越前守の登場する政談物で「ドケチな金持ちの正しいイジメ方」といった皮肉な内容。 元来講釈ネタですが、現在は立川談志家元の十八番。それを家元の高弟・談春師匠の前で演るとは凄い!と思ったら、 ひまわりさん、家元の十八番とは知らなかったそうです(笑)。長い噺なので序盤を少し端折りながら、トントンと運び、 皮肉な面白さを堪能させてくれました。ただし、マクラが前回と同じだったのは少し残念。

仲入り後は、かもめ亭が待ちかねた立川談春師匠の登場。ギメ東洋美術館所蔵の浮世絵名品展をわざわざ大阪市立美術館へ見物に行き、 そこで見聞した大阪人のパワフルなおかしさから、「昔の芸者は今で言えばテレビ局の女子アナ」とマクラを展開して、 師匠譲りの講釈ネタ『小猿七之助』へ。イカサマ師の実父を救うため、商家の手代を川に突き落とす船頭・七之助の退廃的なピカレスクから、 舟に乗り合わせた芸者・お滝と七之助のアダな色模様へと談春師匠はジックリと語り込みます。 鳴り物も入れて、まさに家元瓜二つの口調と仕科でした。お滝の口説きに、三味線が入ってもいいのでは?とは私の余計な感想かしらん。

かくして第5回の『浜松町かもめ亭』、芝居のパロディあり、皮肉な金持ちイジメあり、粋な江戸のピカレスクありと、 お楽しみ戴けた模様。
次回、6月公演も御多数のご来場あらん事を。
高座講釈・石井徹也
今回の高座は、近日、落語音源ダウンロードサイト『落語の蔵』で配信予定です。どうぞご期待下さい。



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