今月の「山本ケイゾーの月例復興報告~ブログの中の人に会う~」。
3月11日に「くにまるジャパン」を放送した宮城県牡鹿郡女川町を再訪してきました。
取材して感じたことを結論から言うと
●カタール政府の支援で出来た巨大冷凍冷蔵施設「マスカー」を中心に、女川の水産業を復興しようとする力強い動きが見られた。しかも3月のときと比較して、復興のペースが加速されている。
●マスカーの周辺には自然発生的にプレハブの水産加工業者が集まりつつある。7月にはマスカー周辺の加工業者団地の公募があり、10月には魚市場が再開するという近々のロードマップが定められている。船舶を着ける護岸工事も進められている。
●一方でマスカーを中心とする水産業の復興以外の生活の復興は依然厳しい状況にあり、引き続き支援が必要。
このように総括される状況だ。
3月の取材で須田女川町長が案内しくてれたカタール政府の支援で建てられた巨大水産冷蔵冷凍施設「マスカー」。
水産冷蔵冷凍施設、加工施設が壊滅状態にあった中で、日本財団の仲介によるカタールフレンド基金が20億を拠出して建設された巨大な冷蔵庫だ。カタールの伝統的な漁法にちなんで、地元では「マスカー」と呼ばれる。しかも100年に一度の規模の津波が来ても一階部分が抜けて、肝心の冷凍倉庫がある2階は生き残り、3階は避難所として機能するという特殊設計だ。
女川魚市場買受人協同組合が保有するこのマスカー。その立ち上げと運営の責任者である理事長の髙橋孝信理事長にお話を伺った。
「くにまるジャパン」で毎日プレゼント用に絶品の蒲鉾を購入させていただいている女川の蒲鉾本舗高政の高橋正典社長はご親戚でいらっしゃるとか。
東日本大震災と津波で壊滅した町と漁場を前に呆然としていた2011年夏。一部の漁師さんから「定置網に魚がかかっているから揚げたい」と高橋さんに連絡があった。しかし氷のコンテナがなく漁業を再開できなかったそうだ。ところが、外交評論家の岡本幸夫さんが女川に来たときに事情を話すと、ほどなく冷凍コンテナを船で送って来たという。
さらにはカタール政府の資金援助が決まり、2012年3月に建設が決定すると、サンマのシーズンの10月頭までに運用を開始させるという強行スケジュールが組まれたが、実質3ヶ月程度での建設完了と、大津波に耐える設計が両立できる建設会社を紹介してくれたのも岡本幸夫さんだったそうだ。
「一生懸命やっていると、神様っていうのはいるもんだなぁ」という言葉がとても重かった。
カタールフレンド基金は総額80億円で設立され、岩手、宮城、福島の「教育、健康、水産業の3分野」に限ったプロジェクトを支援対象とするもの。両国の歴史を紐解くと、カタールは周辺国のように石油が出なかったが、ある日天然ガスが出たそうだ。それを日本の中部電力が、安定した価格で長期に渡って輸入してくれたことに大変感謝している。他国がどうしていたのか分からないが、「日本だけが決して裏切らなかった」とのこと。
マスカーの周辺には、早くも自然発生的に「仮設の水産加工業者」が集まりつつある。高橋理事長もマスカーの存在意義について、
「何か中心となる核がなければ。水産業者たちが"とりあえず冷蔵庫はいらないな。加工施設だけを何とか持とう"と考えて、仙台や石巻に流出しないような足止めになった。やがて、個々の業者が体力を回復したら"冷凍庫なんかに使用料を払うよりも自分達で冷凍庫を持った方が得だ。"ということになって初めて復興したことになる。」と語っていた。
今月の「月例復興報告」。その状況判断は・・・
『女川の復興は広い範囲では依然厳しい状況にあるものの、
一部において踊り場を脱しようとする逞しい動きが見られる。』
高橋理事長曰く
「サンマの季節にまた是非来てよ。」