『音楽マスターピース』では、音楽ライターで翻訳家の五十嵐正さんに
出演していただきました。
今回は、12月も後半に差しかかったということで、今年2013年の音楽界を、
あまりメジャーでないような音楽の新しい潮流にも注目しながら振り返って
いただきました。
まず、お話しいただいた話題は、10年ぶりのアルバム「ザ・ネクスト・デイ」が
突然発表され、今年の初めに話題をさらった「デイヴィッド・ボウイの思いがけ
ない復活」について。五十嵐さんによりますと、「長年沈黙を守っていたので、
病気とも噂され半ば引退状態とも思われていたので、その復活は驚きだった。
実は2年くらいかけてアルバムを制作していたのだが、参加ミュージシャンを
はじめ、関係者に情報を一切もらさないように言い渡し、復活を劇的に演出した
あたりは、さすが自己演出能力の高いボウイという感じ」とのこと。
続いては、今年発売されたインディ・ロック系のアルバムの中で、最も評価の
高かったアルバムのひとつ、『モダン・ヴァインパイア・オブ・ザ・シティ』を発売
した「ヴァンパイア・ウィークエンド」について。五十嵐さんによりますと「彼らは
大学を出たばかりの2007年にデビューし、アフリカ音楽のギター・スタイルと
リズムの影響を取り入れたサウンドで人気を得たグループ。本作では直接的な
アフリカ音楽の影響は控えめで、これまでよりもピアノやキーボ―ドを多く使い、
サウンドの幅を広げている。今年の初めにインタヴューしたのだが、この世代の
ミュージシャンはロック・バンド・スタイルの音楽をやっていても、ロックとヒップ
ホップなどを並行して聴いて育っている。マイクを手にラップをしてもいいのに、
あえてギターを持ってバンドをやるということは、或る意味では自分たちにバンド
・スタイルという制約を与えているわけで、その制約を興味深いと考えるところに
自分たちの強みがあると言う発言がおもしろかった」とのこと。
次は、今年の新人の中で最も人気を得たという、ロスアンジェルズ出身の3姉妹の
グループ「ハイム」について。五十嵐さんによりますと「シングルやEPは数年前から
出していて、ずっと待たれていたアルバムを遂に発売したところ、英国のアルバム・
チャートのトップとなった。今年の夏のフジ・ロック・フェスティヴァルに出ており、僕も
その予想以上のパワフルなパフォーマンスに圧倒された。3人とも子供のときから
両親のやっていたファミリー・バンドに加わっていたので、演奏能力が高く、ブルーズ
・バンド時代のフリートウッド・マックの曲<オウ・ウェル>を迫力ある演奏で聞かせたの
には驚いた。そして、ラストは全員でフロア・タムの強烈な乱れ打ち。可憐なルックス
からは予想もできない、ワイルドなロック娘たちだった。ただし、アルバムはライヴとは
異なり、洗練されたポップなサウンドになっている。彼女たちの特徴は、親とバンドを
していたので、生まれる前の60~70年代のロックやポップに親しんでいる一方、80
年代のR&Bやダンス・ミュージックも好きなようで、その影響がミックスしているところ」
なのだとか。
最後は、今年10月27日に71歳で亡くなった「ルー・リード」について。五十嵐さんに
よりますと「今年も残念ながら、素晴らしいアーティストたちがこの世を去ってしまった。
リッチー・ヘヴンス、ドアーズのレイ・マンザレク、J.J.ケイル、ジョージ・ジョーンズ、
ボビー・ブルー・ブランドなどなど。その中でも、ルー・リードの死には音楽界全体が
悲しみに包まれた。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド~ソロで57年もの間、歌詞に
おいてもサウンドにおいても、その限界を広げてきた彼の音楽は、パンクやニュー
ウェイヴに大きな影響を与え、すべてのオルタナティヴ音楽の元祖的存在と言える」
ということでした。
そして、今回は上記の4組の楽曲を1曲ずつご紹介いただきました。
今日、ご紹介いただいた音楽は・・・
1.The Stars (Are Out Tonight) / デイヴィッド・ボウイ
2.ステップ / ヴァンパイア・ウィークエンド
3.The Wire / ハイム
4.パーフェクト・デイ / ルー・リード
以上の4曲でした。