終わりよければ・・・(放送終了)

月例復興報告 山本ケイゾーさん

毎月東日本大震災の被災地域を取材してレポートしている「山本ケイゾーの月例復興報告~ブログの中の人に会う」。
移動型メディア・エディターで、ブルーイッシュメディアのエディター・山本ケイゾーさん。
かつて番組では「人間管制塔」のニックネームで呼ばれていたことも。

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今回の取材はこのコーナーで最初に取材した岩手県の魚市場。
現地の漁業者の状況を伝えるブログ「続・魚ログ」をケイゾーさんが発見し、取材に行ったのが最初でした。
以前は魚一番の「完成予想図」が出ていた状況でしたが、いよいよそれが完成する段階に入りつつあります。
今回はその追跡レポートです。

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大船渡の魚市場は今、国内屈指と呼んでいい、最先端の技術、工夫を取り入れた市場に生まれ変わろうとしています。
今回お話を伺ったのは前回と同じ、市場で働き、魚市場の水揚げの様子を伝えるブログ「続・魚ログ」を担当する新沼菊也さん。
東北の方特有のおっとりした話し方ですが、表情は燃えていたのが印象的でした。新沼さんは、来年5月の市場のオープンに向け、今の時代にあった、新しい魚市場システムの構築を進めています。

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具体的には、消費者への情報開示がかつてなく求められる時代に合わせて、一般の人にも水揚げされた漁の状況や魚の価格がリアルタイムでわかるようにするということ。

生産者も、朝に魚をもってきて昼ごろ自宅でパソコンを開けば「これくらいだったのか」と瞬時にわかるようにするそうです。

また、水揚げの状況をライブカメラで配信。実を言えば、これはこれまで新沼さんがブログで活動してきた内容を市場全体のしくみに組み込むアプローチなんだそうです。
魚の入札もペーパーレスにし、タブレット端末での電子入札を導入。これは漁業の世界では南日本の港ではすでに事例があるそうですが、東北では初めてだそうです。
一方で、電子入札などに慣れない高齢者の買受人へのフォローが大事だともおっしゃっていました。

さらに、市場に展望台やレストラン、会議室など「市民会館」的な機能をもたせ、街のシンボルにし、広く話題になるようにしたいとのこと。

今、大船渡で魚市場の改革に力を入れるのは、やはり港町=大船渡にとって「漁業の復興なくして街の復興はなく、漁業復興に多くのウエイトを傾けざるを得ない。」とのこと。

水揚げは昨年に比べ増えているとのこと。こうやって伺っていると、市場自体は着実に前に進んでいる印象を受けます。
新沼さんご自身、「魚市場そのものは復興がトントンと進んでいる感じ」と語っていました。そして懸念されたサンマ漁がようやく最盛期を迎え、例年よりやや遅れたものの、9月20日には本格化したとのこと。
多い時で1日に、100トン(大型トラック10台分)の水揚げ漁船が3艘くらい入る。1日で計300トンの水揚げだそうです。素人の我々には想像を絶する量でした。


新沼さんがおっしゃるには「サンマについては大船渡が本州1位」。それは、他の港町より一足早く船を呼ぶ体制を整えることができたためで、氷の確保が大きかったそうです。冷やすための氷を用意できるかがポイント。
水揚げする際の決め手となる港の良し悪しは「水揚げの処理能力(速度と冷凍)」で決まるのだそうです。
状況によっては、別の港に水揚げして買受け業者のいる場所までトラックで運ぶ判断も必要になるとか。

 

一方で心配な点もまだまだあります。まず燃油の高騰には頭を悩まされている様子。現在、大型のサンマ漁線などは3晩通しの操業で燃油代が200万円くらい。これは1300万円分くらいの水揚げがあっても赤字になることもある水準だそうです。
照明が多いイカ釣り漁船は小型であっても一晩の操業に15万~20万の燃油代がかかるそうで、まず漁に出る前にコストと売上げの見込みを判断しないといけないことになります。当然、同業者とも駆け引きも生まれるそうです。

漁業全体の悩みとしては、やはり後継者不足があげられるそうです。
しかし、何度かこのコーナーで気仙沼が新人育成に力を入れている様子を取材しましたが、大船渡でも震災以降、漁師さんの若返りが目立っていました。特に定置網の乗組員にはそれが顕著。漁師の仕事が見直されている様子でした。
漁が当たったときは給料と別にボーナスが出るそうで、こんな不景気な社会において、やりがいにつながっているそうです。

今回の取材は総括すると、全体に活気のある前向きな空気が感じられるものでした。当然、新しい魚市場の建設が軸となっていて、漁業を中心とした街全体のまさにエンジンの始動準備を進めている姿が印象深かったと山本ケイゾーさんは印象を語っていました。