『音楽マスターピース』では、先月まで毎週水曜日にお送りしていた
「エキゾチック・ジャポン」にご出演いただいていた、おなじみ"よろず
エキゾ風物ライター"のサラーム海上さんに出演していただきました。
今回は、『中東音楽の発信地 レバノンの音楽』というテーマでお話し頂きました。
レバノンという国についてサラームさんに伺ったところ、「首都ベイルートは人口が
180万人と東京と比べるとはるかに小さいが、古代フェニキアの時代からの国際
都市である。1975年から1991年まで15年間を内戦に明け暮れており、今でも
テロは絶えない。音楽に関しては、中東音楽の伝統を守りつつ、フランスとの繋がり
から西欧の音楽の影響も受けた独自の音楽シーンを形成している。宗教も国民の
約40%が東方典礼カトリック教会などのキリスト教、約55.7%がドゥルーズ教徒
以外のイスラム教と多様で、いわゆる「アラブの国」としては趣を異にしている。
また、レバノンは宗教と文化のモザイク国家と言われ、主要なグループだけで19の
コミュニティーがあると言われ、単純にキリスト教徒だから、イスラム教徒だからという
一言では区切れない。そして、地中海文化のひとつであるレバノン料理は、野菜、
ハーブ、オリーブ油を多用する」ということでした。
そんな「レバノン」を10年ぶりに訪れたサラームさんですが、やはりテロが発生し、
空港も戒厳令状態だったのだとか。実際にサラームさんが着いた当日も治安機関の
幹部を狙った爆弾テロが起こり8人以上が死亡。その後、数日は落ち着かない日々が
続いたが、1975年から15年続いた内戦以降、そういう緊張状態と常に隣り合わせて
人々は生きていたため、「今日の人生を精一杯楽しむ」という生き方が基本のようだと
感じられたそうです。また、東京やロンドンやイスタンブールなどの、世界の大都市には
及ばないが、新しい音楽を作ろうという若い音楽家たちの動きは、確実にサラームさんの
ところまで届いて来たそうです。
そんな「レバノンの音楽」の中から、最初にご紹介頂いたのは、1950年代に活動を開始し、
レバノン民謡やアラブ古典音楽に、当時最先端だったジャズやラテン、シャンソン、オペラの
要素を持ち込みながらも、芸術性の高い歌詞、ビロードのような歌声でアラブ諸国全土で
知られるようになったという、レバノン、そしてアラブ世界を代表する女性歌手『フェイルーズ』。
続いてご紹介頂いたのは、現在のレバノンでは日本のポップスと同じように西洋楽器や
西洋音楽ロックやポップスを用いながら歌詞やメロディーに、その土地のローカル性を
残した形の若者向けの音楽「ポップ」が一番人気があり、その中でも最も人気の高い
女性歌手『ナンシー・アジュラム』。
そして、最後にご紹介頂いたのが、内戦時、十代の頃にフランスに移住し、フランスで
ストリートのヒップホップやロックの演奏を知り、音楽を始め、内戦終了後にベイルートに
戻ってきて、90年代末にプロとして活動を始めたという『ゼイド・ハムダン』でした。
今日、ご紹介いただいた音楽は・・・
1.Al Ayel / フェイルーズ
2.ya banat / ナンシー・アジュラム
3.バレーケ Balekeh / ゼイド・ハムダン
以上の3曲でした。