第22回 2010.03.18 ON AIR
2010/03/18
『センパツ!』毎週木曜日の『情報満載スタジアム』は
「弁護士中田のタイムリートーク」。
毎週、その時々の“タイムリーなニュース”を
中田総合弁護士事務所の中田
“法律”の観点から解説します。
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○注目のニュース
法科大学院のあり方
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司法試験の合格率が年々下がっている
『法科大学院』のあり方を検証するため
政府が新たに設けた作業チームの初会合が開かれました。
メンバーは、法務省と文部科学省の副大臣を中心に、
裁判官や、検察官、弁護士らで構成されていて、
出席者からは、
「司法試験の合格者が極端に少ない法科大学院を
特に問題にすべき」
「法科大学院の数が多すぎるのではないか」
という指摘が相次ぎました。
作業チームは月に2回程度のペースで会合を開く予定で、
今後、法科大学院の教授や学生から
ヒヤリングを行うなどして議論を重ね、
全国で74ある法科大学院の再編成も含めた
抜本的な見直しを検討し、
今年の夏をめどに改善策をまとめることになりました。
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◆ポイント1 法曹人口の問題
1980年代の日米貿易摩擦、バブル経済の裏では
“法曹人口”の問題が起きていた!!!
日米貿易摩擦の陰では、
アメリカから「日本は弁護士の数が少ない」
「とても法治主義が全うされているとは思えない」
――と批判されました。
中田 「“ビジネスローヤー”として
経済活動を主要な仕事とする弁護士が成立してきたし、
『弁護士の数が少ない』と
“外”からの圧力、“中”からの声として
弁護士の数の問題が起きてくるんです」
中田 「バブルが起きてくると、今、私には全然 縁がないけど
『お金が儲かる』という意識があって
裁判官、検察官に任官する希望者が激減したんです」
こうして法曹人口の問題が発生。
吉田 「貿易摩擦とかバブルとか…その裏で、
『こんなことが起きていたのか!』と思いました」
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◆ポイント2 法曹養成の問題へ
『試験が難し過ぎるから、若い合格者を確保できない』
『若い合格者を中心にして、合格者を増やすべき』
弁護士、裁判官、検察官の【法曹三者】の中から、
こうした声が出てきたことから
司法試験合格者を増やす方向性が作られていきますが・・・
合格者が増えれば、司法研修所の施設の規模や
予算をオーバーするなどの問題が起き・・・
中田 「『これまで通りではダメ』と
ここから法曹養成の問題が発生してくるんです」
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◆ポイント3 法曹養成の問題は、市民社会全体の問題
1997年、当時の与党・自民党、政府から
ロースクールについて検討する議論がなされ
日本版ロースクール=法科大学院の構想がスタート。
2000年には、構想が固まり、
ここに【法曹三者】が加わり、
法科大学院創設の方針が固まっていきました。
ここで考えなければいけないことは・・・時代の背景。
ソ連の崩壊、冷戦の終結、グローバリズムの始まり…
市民社会の構造転換が行われている真っただ中において、
新しい司法社会の構築が必要――と
「裁判員制度」や「検察審査会」などの制度ができています。
中田 「そういう意味では司法だけの問題というよりは
市民社会全体の問題に、すでになっているんです」
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◆ポイント4 法科大学院の問題点
法科大学院の創設に対しては、
すべての大学の参加が可能となりました(=全大学体制)。
これにより、既存の大学が
“司法試験合格者の確保”
“それによるステータスの維持・向上”を
目指すことにつながりました。
中田 「『適正な法曹人口とは?』
『合格者の質を維持するために適正な合格者数は?』
という議論は、おいてけぼりになってしまったんです」
したがって、既存の大学が“我も我も”と
法科大学院の創設に参加。
それまで司法試験に実績があった大学は
合格者枠・定員枠を要求。
実績のなかった大学も『合格者の定員枠』確保に奔走。
中田 「そういうものを無視するわけにはいかない状況の中で
議論が進む――ということになってきたわけです」
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◆ポイント5 合格者『3千人』の根拠は???
2002年、司法試験の年間合格者を
「2010年頃に3千人に増やす」計画が閣議決定されました。(※)
中田 「(司法試験合格者)『3千人』という数字が
どこから出てきたのか、実はよくわからないんです」
吉田 「はじめに『3千人ありき』で、スタートしたんですか?!」
中田 「定員から考えれば絶対無理、初めから無理、
計算すればはじめからわかる話なんです」
(※)計画は下方修正する方向で見直す方針が固まりました
■全大学体制で構想したことは正しかったのでしょうか?
大学間で、偏差値を物差しに『序列』が確立された中で、
法曹の質を維持する制度になっているのかどうか――が
見直されています。
一方で、現在、法科大学院に在学している皆さんや
これから目指す皆さんにとっては、
簡単に制度をコロコロ変えられたら
『たまらない』という思いを抱いて当然。
中田 「日本の国の通弊で
まるで(意味もなく)何回も掘り起こす
“道路工事”みたいなことが、ここでも起きちゃったんですね」
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◆ポイント6 法曹資格制度を一元的に!
中田 「さらに問題視されるのが、
『法曹一元』という制度になっていないんです」
“法曹養成は一元的に”――ということになっているものの、
弁護士、裁判官、検察官の資格は、
法曹資格としては統一されていながら
キャリアはまったく別々。
中田 「裁判官のキャリアを積んだら、
裁判官で一生終わるのが普通。
弁護士も途中で“任官”する道はあるけど、例外的」
裁判官と検察官との任用が変わらない限り、
結局“弁護士を増やす”ということ以外の意味はないのでは?
中田 「結局、今の法曹資格制度が
本当に“一元的”になっているのかどうか――、
“試験はひとつ、養成も一つ、
でもそのあとのキャリアは別々”でいいの?――
ということも議論されるべきじゃないのでしょうか」
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(中田)
「“社会システム”として“法曹システム”をどう考えるのか――。
あるいは“弁護士は何をしてくれる存在なのか”
社会や経済との関係で、どういう役割を果たすべき人たちなのか――
そういうことから
“人口はどの程度が適正か”
“『質』はどういったことを基準に考えるべきなのか”
こういったことは、新しい制度を構築するくらいの気持ちで
やらないといけないと思うんです。
既存の制度を、ある一定の程度維持するのはいいんだけど
最後まで、それでやろうとすると、結局のところ、
維持できない → やり直し → 見直しの繰り返しで、
抜本的な対策は何もできないということになりかねないと思うんです」
次回もお楽しみに!
投稿者 senpatsu : 2010年03月18日 21:00
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