第15回 2010.01.28 ON AIR
2010/01/28
『センパツ!』毎週木曜日の『情報満載スタジアム』は
「弁護士中田のタイムリートーク」。
毎週、その時々の“タイムリーなニュース”を
中田総合弁護士事務所の中田
“法律”の観点から解説します。
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○注目のニュース
過労死
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大手ファストフード店に勤務していた25歳の男性が
急性心機能不全で死亡したのは
“過労”が原因――として、男性の母親が
遺族補償給付などを支給しない処分を取り消すよう
国に求めた訴訟の判決が、
今月18日、東京地裁でありました。
裁判長は「業務の過重な負担により病気を発症し死亡した」
と述べて、労災を認定し、不支給処分を取り消しました。
男性は2000年11月7日正午から、翌日8日午前5時30分まで働き
一度帰宅後、正午に再び出勤後まもなく亡くなりました。
病気を発症するまでの6ヶ月間で
時間外労働が80時間を越えた月が相当あったとのことです。
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◆ポイント1 「労災不認定処分」の取り消しを求める行政訴訟
はじまりは、労働基準監督署長が亡くなった男性について
労災認定をしなかったことこと(=労災不認定処分)。
中田 「ご遺族は、息子さんが亡くなった原因は何だったのか
大きく問題にしたと思うんです」
遺族は
不認定処分をした労働基準監督署長を被告として
「労災不認定処分」の取り消しを求める行政訴訟を提起。
東京地方裁判所は
労働基準監督署長の認定処分を「間違い」とし
男性の「過労死」を認めました。
この判決に至るまで、
男性が亡くなってから9年の歳月を要しました。
中田 「行政・役所の処分を覆すのは
非常に長い期間と、大変な労力がかかる場合が多いんです」
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◆ポイント2 裁判所の判断が「過労死」認定基準の改正に
過労死とは
過度な労働負担が誘引となって、高血圧や動脈硬化などの
基礎疾患が悪化し、脳血管疾患や虚血性心疾患、
急性心不全などを発症し、
永久的労働不能、または死に至った状態。(厚生労働省の定義)
過労死の認定基準は、
過去2度、平成7年、13年に改正されています。
労災認定をめぐる具体的なケースに関して
行政訴訟が提起され、
その裁判所の判断が“改正”へつながるきっかけとなりました。
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◆ポイント3 時間外労働
ニュースの判決では
男性の自宅での作業も『業務』にあたる――と判断し
時間外労働と認定されました。
中田 「これがおそらく、最初の不認定処分と
判決の認定とがまったく正反対になった
大きな理由ではないか、と思われます」
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◆ポイント4 法定労働時間
中田 「過重労働は、刑事事件。
事業主の犯罪にもなるんです」
労働基準法には「法定労働時間」として
1日8時間、週40時間を越えて労働させてはならない――と
定められています。
この法定労働時間を越えて労働時間を定めるには
書面による労使間協定が必要です。
その場合も「年360時間を越えてはならない」
「通常賃金の25%以上の割増賃金を
支払わなければならない」と定められています。
中田 「割り増しどころか、賃金自体を払わない
“サービス残業”が横行している実態の中で
過労死という問題は起きてくるんです」
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◆ポイント5 罰則
労働基準法に違反した事業主に対する刑事罰は
6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金。
中田 「過労死という結果が生じた場合は
軽すぎるんじゃないか――という批判があります」
また、事業主は、雇用契約上の義務として
雇用している従業員が安全に業務に従事できるようにする義務
“安全配慮義務”を負います。
この義務を怠ると(安全配慮義務違反)
“債務不履行”として生じた損害に対して
賠償しなければなりません。
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◆ポイント6 市民の行動が制度を変える
労災・過労死の認定・判断では、因果関係をめぐって
長期間にわたり争われるケースがあります。
中田 「もともと持っている体質・疾患や
業務外の日常生活習慣がありますよね。
事業主は(死亡と労働環境には)
“因果関係がない”と主張する場合が多いので」
吉田 「解決するのって大変ですよね」
これまで、市民が、労災認定をめぐる裁判、
事業主の民事損害賠償についての裁判などを
起こすことで、
裁判を通じて、制度が変わって(改正)されてきました。
中田 「民事賠償請求の中で厚生労働省の基準が
(判決の)基準にされているということは
一市民の裁判提起や、地道な活動の中から
厚生労働省が動いて
市民の権利を確保することにつながっているんです。
一市民の問題提起が、制度を変えていくことになり
我々弁護士は、常にそう思って仕事をしているわけですが
皆さんも、がんばってもらいたいと思いますね」
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◆ポイント7 国際社会の中の日本
国際労働基準を定める国連の機関「ILO」が掲げる
188の条約のうち
日本が批准しているのは、わずかに48。
中田 「国際的な労働基準を
日本の国内法にしていないということです」
特に問題となるのは、
労働時間に関する17の条約で、
日本はひとつも批准していません。
中田 「国際世論の中では、日本は
“労働基準が守られない国”として
有名なんだそうです。
とても不名誉で、先進国とはいえない――
ということになると思います」
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中田 「過労死の悲しい問題をなくしていくには
条約の批准をするとか、国内法を整備していく、
そして、法を守る順法意識が向上しないと
本当にはなくなりません。
“ワーク・ライフ・バランス”を実現するには
これからの努力が絶対に必要ですね」
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■中田先生セレクションの1曲
ハッピー・アワー / トミー・エマニエル
次回もお楽しみに!
投稿者 senpatsu : 2010年01月28日 21:00