第10回 2009.12.24 ON AIR
2009/12/24
『センパツ!』毎週木曜日の『情報満載スタジアム』は
「弁護士中田のタイムリートーク」。
毎週、その時々の“タイムリーなニュース”を
中田総合弁護士事務所の中田
“法律”の観点から解説します。
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○注目のニュース
民事法律扶助制度
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法律トラブルを抱えながら、経済的に困っている人に
国が裁判費用を立て替えたり、無料で法律相談に応じる
民事法律扶助制度の利用が、今年度に入って急増。
予算が底をつきそうな事態に陥っています。
不況のため、多重債務や労働問題解決を求める利用が
増加したことが、理由の一つで
法務省は、2009年度第2次補正予算案に
扶助費25億円程度を計上する方針を決めました。
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◆ポイント1 民事法律扶助とは
法的な問題(離婚・損害賠償・多重債務など)で悩みながら
経済的な理由で裁判を起こしたり、弁護士を頼めない人のために
一定の要件のもとに、
裁判・弁護士費用を立て替えたり、無料で法律相談をする制度。
扶助を受けるには、次の2つの要件を満たす必要があります。
◆費用負担ができない人(資力・財産・収入が少ない)
◆事件の内容について、勝訴の見込みがないとは言えない
※勝訴の見込みがない――とは?
中田 「まどろっこしい言い方なんだけど
『こんなの絶対無理だよ!』ということにお金を出してあげるのは
制度の趣旨とは違う。
権利を実現したいんだけど、それが経済的に困難という人の
権利実現を助力しましょう――という制度で、それを
“勝訴の見込みがないとは言えない”という言い方をしているんです」
国民向けの法的支援を行う中心的な機関として設立された
『法テラス』(日本司法支援センター)に対して
書類を提出し、審査を受け、認められると
費用を立て替えてもらうことができます。
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◆ポイント2 立て替えてもらった費用の返却
返済条件は、その人の経済状況に応じて決められますが
多くの場合、付き具きの返済額は1万円程度。
生活保護を受けている人や、特別な事情がある人に対しては
返金を猶予するケースもあります。
中田 「経済的な余裕がなくて、
権利実現したいけど できない人には
“駆け込み寺”みたいなものだから
制度をどんどん利用してほしい――と期待されています」
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◆ポイント3 毎年増大する利用件数
代理援助(裁判費用を立て替える制度)の利用件数は毎年増加しています。
◆2006年:約6万件
◆2008年:約8万件
◆2009年:4~8月までの集計だけで 約4万2千件
(前年同時期の34%増)
このままでは(年間)10万件を超え
140億円で足りるとされた金額をオーバーすると見られています。
※140億円の内訳 : 予算104億円 + 返済額として見込まれた36億円
法テラスは、各都道府県事務所に
毎月の限度額を設定し
限度額を越えた場合、依頼は翌月に持ち越すように指示。
年末、最終的に持ち越した場合は
翌年(翌年度の予算)に持ち越すことに。
吉田 「自転車操業ですね」
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◆ポイント4 裁判を受ける権利
憲法32条では『裁判を受ける権利』が保障されています。
しかし、裁判には費用がかかり
経済的な事情から、裁判を受けることができない人もいます。
そこで、権利を 実質的に保障するために
民事法律扶助制度ができました・・・が
中田 「予算が足らなくなって
持ち越し、持ち越し・・・となることで
実質的には、弁護士を頼む権利を制限しているのと同じ――
という批判もあるんです」
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◆ポイント5 利用者急増の原因は?
最も増えているのは【多重債務】の相談で、
今年は、前年より【3割増えている】といわれ
制度利用の7割を占めています。
また【解雇】【賃金、残業代の未払い】などの労働事件も倍増。
吉田 「不況の感じを如実に表してますね」
【雇用】に関する制度利用が増え
【雇用がなくなった】ことから【多重債務】に陥った・・・として
千葉景子法務大臣は先月、記者会見で
“雇用の場に戻るセーフティネット”として
民事法律扶助に予算を確保する意欲を表明しました。
来年度の予算は(自民党政権時代の予算案)139億円から
16億円を加えた【155億円】に。
中田 「日弁連(日本弁護士連合会)は
『民主党政策の表れ』と評価しています」
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◆ポイント6 返済は2~3割・・・“給付制”導入の議論も
費用は【立て替え】が原則ですから【返済】されれば
予算が“底をつく”ことはないのですが・・・
中田 「利用する方の『モラル』もあって・・・
景気が悪いから、返そうにも返せない人もいるので
『モラル』とばかりは言いきれないんだけれども
利用した方のモラルが問われるところはあるんです」
立て替え費用の返済の割合は【2~3割】にとどまり
回収率をどのように上げていくか――ということも問題視されています。
中田 「景気を良くして、雇用政策などで
利用者からの回収率を上げる――
これは政治的な問題だろう、ということで
これをきちんとケアしていかないと
この制度は維持できなくなると思います」
「この際“立て替え制度”をやめ“給付制度にしよう”という
議論さえ、すでに出てきているんです」
「いずれ返さなければいけない制度は
そのことによって、利用をためらう人もいる――
“モラルのある人こそ”利用しにくい制度になっているんじゃないか
と、給付制の導入を求める議論もあるんです」
吉田 「いい制度としてあるわけですから
モラルは守ってほしいですし
なにより、景気が良くなってくれないと・・・」
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■中田先生セレクションの1曲
クリスマス・ギフト / SUITE VOICE
中田 「きょうはクリスマス・イブですから
“歌の贈り物”ということで、とても素敵な歌なので聴いてください」
投稿者 senpatsu : 2009年12月24日 21:00