2017年10月2日 赤い種
週末我が家で事件が起きた。
土曜深夜
2階で休んでいる私の部屋に
1階で過ごしている息子が駆け込んで来た。
「おやじ!大変だ!おばあちゃんの部屋で煙だ!」
いきなりの大声で、一瞬動揺した。
ここは何処だ?
あ、自宅だ・・
「どうしたんだ?」
「おばあちゃんの、電子レンジの中が燃えてる!」
確かに、焦げ臭い煙が2階にも届いていた。
慌てて、枕元の眼鏡をかけ立ち上がった。
時計を見た。2時32分
部屋から出ると階段はもう煙が立ち込めている。
階段の手摺を掴みながら
「落ち着け!」
自分に声をかけた。
母親の部屋は明るかった。
蛍光灯がついている。
その明るさを煙が曇らせている。
咽そうな刺激臭。
部屋の入口付近がキッチン。
入ってすぐに冷蔵庫
その隣りが電子レンジだ。
レンジの扉は閉じられていて、煙がそこから部屋に広がる。
庫内には炎が2つ。
ピンポン玉大の黒焦げとなった物体から炎が見える。
母親はベッドの脇で尻もちをついたまま。
炎は5センチくらい、思ったよりも小さく安心した。
雑巾を水で濡らし、扉を開け、物体を包み
水道を流したままのシンクに移した。
「ジュー!」
火は見えなくなった。
ほっとしたと同時に、こんな小さな火種なのに
想像を超える煙が出ることに驚嘆した。
ピンポン玉の火元とは何か・・
ジャガイモだった。
電子レンジは、電波が食品に含まれている水の分子を振動させて
摩擦熱を発生させることによって、食品を加熱する。
水分が少ない食材を少量、加熱した場合、
短時間で水分が蒸発し、焦げた食品から発火することもある。
ジャガイモは水分が少ないのだ。
母親は、お粥を温める時と同じように「自動調理ボタン」を押した。
電子レンジには、利用者が時間や出力を設定して加熱する「手動」と
「肉ジャガ」などレシピに合わせて自動的に加熱する
「自動調理」の機能がある。
母親は、自動調理の設定は、問題が起きれば自動的に止まるものと思っていた。
ジャガイモは炭化していた。
食品が少量の場合や水分量が少ないものの場合は、
思っているよりも短時間で加熱が進むことがある。
取扱説明書に従った設定にすることは勿論だが、
判断が難しいときは、加熱時間を控えめに設定し、
様子をみながら加熱すべきなのだという。
万一、発煙・発火が起きた場合は、あわててレンジの扉を開くと
酸素が急激に入って炎の勢いが増してしまう可能性がある。
電子レンジを停止させ、電源プラグを抜いて、扉を開けずに煙や火が収まるの待つのが良いのだという。
腰の抜けた母親が、孫を呼んで
私を呼びに行かせたようだ。
皆、ケガもなく、大事に至らなくてよかった。
「何だかお腹がすいちゃって、ジャガイモを温めたら・・」
「おふくろ、丑三つ時に芋はやめようよ」
苦言を呈して、換気扇を回しっぱなしにして部屋を後にした。
過信は禁物だ。