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diary

2017年6月5日 ノズルに似ている

先週の続きをお話しする。
我が家の温水洗浄便座が故障した。
可及的速やかに使用したい家族の希望と
取り外し・取り付け費用を浮かせたい小生の思惑が
「商品即お持ち帰り」を選択させた。
店員に
「これって、自分でも取り付けられますかね?」
「んー、ま、出来ないことはないと思いますよ。ただ・・」
「ただ、何ですか?」
「水回りの事ですから、水漏れに注意が必要です」
店員はにやけながら言った。
店員の「ニヤケ」が、我が心の中のアラームを1回鳴らした。
しかし、解除ボタンを押したのには1秒もかからなかった。

さほど重くはないが、縦横1メートル、厚さ50センチ程の
段ボール箱と共に帰宅。
猫が興味津々で箱の臭いをかぐ。
箱を開け、説明書に目を通す。
手順はこうだ。
先ず今設置されている機械の電源コードを抜く。
水道栓を閉じ、便座に接続しているパイプを外す。
古い製品を便器から外す。
新しい物を固定し、水道官にパイプを繋げ
電源コード差し、スイッチを入れる。

作業に移るまで不安は忘れていた。
しかし、出端から難航。
先ず、コードを抜き、庭にある水道栓を締めた。
取り換え現場の2階トイレに戻り
古い製品を取り外すために、
20センチ程の、便器と壁の間に手を潜らせ
ナットを緩めていく。
この作業は目視出来ない。
手探りでナットを指先で確認し、レンチを当てる。
これが緩まないのだ。
30分すったもんだして
もしかしたらと反対方向に回してみると、緩んだ・・。
本体をはずすのに小一時間。
眼鏡が汗の滴で視界不良。
続いて水道の栓を締めパイプを取り外す。
用意しておいた雑巾に、中の水を吸わせ
こちらは順調。
これで古い製品が外れた。
今度は買ってきた物を設置する。
便器に本体を固定。
そして、水道管と本体にパイプを繋ぐ。
しっかりナットを締め完了。
水道栓を開ける作業に入る。
万が一の為、娘をトイレに呼び、水が漏れたら
声を出すように頼んだ。
階下に降り、庭の水道栓を開ける。
「シュー」
水が元気に流れ始めた。
これで良し
今夜から快適なトイレタイムが過ごせるぞ・・
15秒後、2階から
「出た~!水が漏れてるよ~」と大声。
「え~?」慌てて栓を締める。
何だ、どうした?
2階に戻ると、
水道管から分岐させる部分のナット脇から水がジョロジョロ。
雑巾では吸いきれず、床に溜まった水を
猫が美味そうに飲んでいる。
どうしてだ?ナットもしっかり締めた。
ネジの部分にもシールドテープを巻きつけた。
もう1度、ナットを締め直し、再び水道栓に。
恐る恐る開栓していく。
「シュー」
パイプを水の精の音が進んでいく
そして20秒、今度は止まったか・・
「出た~、漏れてるよ~」
残念そうな娘の声。
何がいけないんだ?
私の限界を超えたか。
水道修理を頼むしかないかな・・
猫以上に猫背で2階に上がって行く。
当の猫は水飲みに満足したと見えて、
直径1センチの黒いゴム製リングで遊んでいる。
いいなあ、猫は呑気に遊んでいられて。
半ば放心状態で奴を眺めていた。
3分位たっただろうか
「あ~」
「そうだったか!」
原因は猫がおもちゃにしていた物かもしれない。
パッキンだ。
ここに1つあるということは
あるべき所にないのかもしれない。
早速ナットを緩め中を確認した。
「やっぱり!ない」
床からゴムの黒いリングをつまみ上げ
管の接続口に当てる。
そして、より丁寧にナットを締めた。
3度目の挑戦。
「シュー」
果たして管の中を進む透明な命は
本来出るべきところではなく、
また、ナットの脇から零れてしまうのか。
30秒が経った。
娘の声はしない。
2階に行くと娘が管を睨んでいた。
「今度は?」
「うん、出てないね」
乾くのには時間がかかるだろう床に滴は落ちていない。
「よし」
電源コードを差しボタンを押した。
「ジュジュー」
管を水が進む
ノズルから噴水。
時計を見ると2時間半経過。
たった1センチのゴム製パッキンが
認識以上の大切な役割を果たしていたのには驚いた。
世の中には、日頃目立たないが、
「無くてはならない縁の下の力持ち」
という役割が幾つもあるのだろう。
それを気づかせてくれた、パッキン、有難う!

6月に入っても、管から水は漏れていない。

ノズルに似ている
ノズルに似ている