2017年3月27日 満開
それにしても涙の似合う男である。
大相撲春場所千秋楽、奇蹟が起きた。
新横綱の稀勢の里が、優勝決定戦で大関・照ノ富士を破り、
2場所連続2回目の優勝を果たしたのだ。
今場所全勝で来ていた稀勢の里は、13日目に初めて土がつき
さらに左肩を強打、救急車で病院へ。
てっきり休場と想像していたところ
横綱の責任を優先し強行出場。
しかし翌日の取り組み、案の定力なく敗れた。
14日目を終えて、照ノ富士がただ1人1敗
優勝争いのトップに立ち、2敗で稀勢の里が追う展開となった。
そして千秋楽、稀勢の里と照ノ富士が結び前の一番で対戦し、
稀勢の里が苦しみながらも突き落としで勝ち、
2人が13勝2敗で並んだ。
そして、優勝決定戦。
これまた稀勢の里は気力だけの相撲。
しかし土俵際押し込まれての小手投げで勝ち、
新横綱としての執念を見せ2場所連続2回目の優勝を果たし。
勝った瞬間は泣かなかった。
やがて表彰式。
場内起立し国歌斉唱。
歌い出し、新横綱は大きな口を開け、声が届いてくるようだった。
しかし、そんな稀勢の里の心が、隠しきれない喜びで一杯となるのに
時間はかからなかった。
両目から零れる熱い涙。
拭っても拭っても湧き出て来る。
鼻の奥がツーンとし、思わず右手を鼻に当てる。
テレビ観戦のこちらも、ジーンと涙が出て来る。
よかった、1人で見ていて。そして鼻をかむ。
君が代は続く・・。
内閣総理大臣杯授与ののち、インタビュー。
ここでも涙をこらえ切れず
「すいません。今日は泣かないと決めてたんですけど...」
と嗚咽一歩手前だった。
決定戦については
「自分の力以上のものが最後に出たので、本当に諦めないで
最後まで力出してよかったです」
横綱になると土俵入りをはじめ、これまでと異なる点が多くある。
「今までの相撲人生の15年とは違う15日間。
横綱の土俵入りも初めてやって今は疲れた。
見えない力をとても感じた15日間だった」と本音がでた。
「今日の千秋楽は見えない力がはたらいたので、
確信とはいかないけど、
またこれを確信に変えられるよう稽古をして
いい相撲を皆さんに見せられるよう頑張る」と語った。
そして、勝者がいれば敗者もいる。
照ノ富士は、痛めている膝と相談し
この口惜しさを稽古にぶつければ
横綱はそう遠くないはずだ。
最後まで諦めない。
自分を律し、日々精進、諦めなければ見えない力も味方する。
今場所も、稀勢の里から相撲から教えられた。
それにしてもよく泣かせてくれる男である。