2016年1月25日 春は必ずやって来る
大相撲初場所は、大関・琴奨菊が14勝1敗で初優勝し、
10年ぶりの日本生まれの力士優勝となった。
初場所は、14日目を終えて琴奨菊がただ1人1敗でトップに立ち、
2敗で横綱・白鵬と平幕の豊ノ島が追う展開となっていた。
つまり、自身が勝てば優勝、琴奨菊が負けて、
豊ノ島と白鵬がそれぞれ勝てば、巴戦が組まれるところだった。
琴奨菊は大関・豪栄道と対戦し、見事に勝って14勝1敗、
初めての優勝を果たした。
琴奨菊は、平成23年の秋場所後に大関に昇進したが、
けがにも苦しんで、なかなか優勝争いに絡むことができなかった。
大関陥落の危機、角番も5回経験した。
それでも、地道な稽古を重ねた結果、
今場所は3横綱をすべて破る活躍を見せ、
初土俵から14年、31歳で悲願の初優勝を果たした。
表彰式でのインタビューで
「つらいときも成績を残せなかったときも応援をしてもらって、
ここに立つことができていることが、言葉にできないくらい嬉しい。
自分の相撲をやりきれば『できる』という自信がついたので、また頑張っていきます」と取り組みの時の硬い表情からは想像できない笑顔で話した。
琴奨菊は新入幕から66場所目での初優勝で、これは元関脇の旭天鵬に次いで、歴代2位のスロー記録。
また、初土俵から84場所目での初優勝は、旭天鵬や元横綱の隆の里などに続いて、歴代6位のスロー優勝だ。
さらに、31歳11か月での初優勝は、年6場所制となった昭和33年以降では、旭天鵬、元関脇の貴闘力に次いで、3位の高齢記録です。
琴奨菊は福岡県柳川市出身の31歳。
全国中学校相撲選手権で優勝し、相撲の名門、高知の明徳義塾高校から
佐渡ヶ嶽部屋に入門して、平成14年初場所に初土俵を踏んだ。
平成16年の名古屋場所で十両に昇進し、3場所で通過して、
平成17年初場所に新入幕を果たした。
力強い出足で左四つやもろ差しからの重い腰を生かした「がぶり寄り」を
得意とし、平成23年の秋場所後に大関に昇進。
しかし、大関に昇進してからは、平成25年の九州場所で取組中に右胸の筋肉を断裂するなど、けがに苦しんで、万全の状態で臨めない場所が続き、なかなか優勝争いにも絡めなかった。
それでも、体と向き合いながら地道なトレーニングを重ね、
今場所は、3横綱をすべて破って自己最高の12連勝を果たすなど、持ち味の出足のよさが光っていた。
14勝1敗の優勝。
今場所、唯一琴奨菊に土を付けたのが、平幕・豊ノ島。
「僕が見ている人なら『こいつ何してんねん』と思うだろうな」。
琴奨菊と豊ノ島。
2人は子供の頃から互いによく知るライバルだ。
高知県出身の豊ノ島に対し、福岡県から高知・明徳義塾中に
相撲留学した琴奨菊。
高知県代表として一緒に臨んだ国体で、団体優勝したこともある。
角界入りし、初土俵を踏んだのは同じ平成14年初場所だった。
入門した頃。「2人で関取になれればいいね」と励まし合っていた。
14年がたったいま、優勝を争う重要な局面で対戦。
豊ノ島は「楽しみとかいう気持ちは土俵に上がる前まで。
普段仲がいいから余計に負けたくない」と覚悟を決めていた。
気迫と気迫の勝負を制した豊ノ島は
「引退した後に2人で話せたら良いなと思う、勝ち星だった気がする」。
優勝後、支度部屋近くの通路で、親友琴奨菊を迎え、抱き合った。
人それぞれにドラマがある。
今場所も、沢山の汗、そして涙が流れた。
「最後まで自分を信じ切りたい」
千秋楽に臨んだ琴奨菊の言葉。
大きなチャンスを手にするため必要なのは「運」
その運を引き寄せるのは不断の努力だということを
改めて彼は教えてくれた。