2009年9月18日 摩訶不思議
毎年この時期に驚くことがある。彼岸花・・・昨日まで気づかなかったのに一夜にして近寄りがたい赤色を辺りに放つ。形状も独特。剃刀花(かみそりばな)狐花ともいわれる。曼珠紗華(まんじゅしゃげ、まんじゅしゃか)という名は山口百恵さんのヒット曲にもあった。しかしどうして彼岸が近くなると、一見何もなかった場所につぼみを付けた彼岸花が一気に伸びてくるのか・・・。
実は何もないと見えた土の下には、彼岸花の球根(鱗茎)があって、それから一気に伸びてきているのだ。生長のスピードは一日に10cmにもなることがある。そして、一斉に華麗な花を咲かせる。
花の時期の終わった彼岸花はどうなっていくのか・・・。
見た感じでは枯れてゆく。しかしこのとき単に枯れているのではなく、栄養分を球根に戻しているという。入れ替わるようにツルツルの葉が伸びてくる。こうして、他の植物が枯れようかという時期に葉が延びてきて、弱い光りながらライバルのいない中で冬の柔らかな陽を浴びて、葉が茂っている。その盛んな葉も、翌年の3月~5月頃には枯れてしまう。そのころ他の植物の芽が伸びてくる。彼岸花は、球根になって土の下で静かに秋の彼岸を待つているのだ。
ヒガンバナの一年をまとめると・・・秋(9月)に花が咲いて枯れる、冬から春(10月~4月):つやのある葉を広げて光合成をして栄養分を鱗茎(球根)に蓄える。新緑の頃になると徐々に地上部は枯れてしまう。春から夏(4月~8月):地上には何もなくなり、地下では鱗茎(球根)の形で休んでいる。
花のある時には葉が無く、葉のあるときには花がないので、花と葉を同時に見ることができない。このことから韓国では、ヒガンバナの事を「サンチョ(相思華)」と呼ぶ。「花は葉を思い、葉は花を思う」という意味からだそうで、何ともロマンチックな名前。
あなたの近くで彼岸花を見つけたら、思い出して欲しい。100人いれば100通りの人生がある。植物にも様々な営みがある。どれもが素晴らしいはずだということを。