2008年2月4日 塵の味・・・見た目綺麗でも・・・
2008年の春(立春)の前日節分に東京は大雪となった。早朝起きて驚いた。ベランダの手摺りに白い綿菓子がこんもり。2センチはある。あまりに美味しそうなのでつまんでみると、塵の味がした。期待はずれの口中と同時に「降るとは聞いていたが、こんなに・・・」焦った。
2月3日は息子の中学受験日。あとにも先にもこの1校しか受けない。
「自分が行きたい学校だけを受けなさい」そういったのは半年前だった。「友達が受けるから」という理由で漠然と受験したいと言い出した息子。義務教育なわけだし、私立に入ればかなりの出費。「何でも望むものが簡単に手にはいると思ったら大間違い!」この思いを教えたかった。何より、準備期間がなさ過ぎる。「自分の心と相談して決めなさい。君は将来何になりたいのか。今わからないなら、こんな道に行きたいでもいい。それを父さんに説明してごらん。そのためにココ(中学)に行きたい!とね」 2週間後、意外にも答えを出してきた。彼は諦めると思っていた。それが「公立の中高一貫に行きたい。地球のことをもっと知りたいから。この学校はそれを6年間考えるんだって!」どこまで本気かはわからない。しかし、息子なりに考えたのは伝わってきた。決して優秀とは言えない成績。何より我が身を振り返れば、小学時代に『受験』という文字はなかった。時は流れて愚息が中学を受けるなんて・・・。隔世の感をおぼえつつ、これから半年、自分で言い出したことをやり続けてみろと背中を押した。その答えが今日出る。
我が町は若干標高も高く、積雪も都心の倍はある。当日車で試験会場まで送る約束をしていた。雪用タイヤははいている。しかし、たとえ道を走れたとしても、慎重にノロノロ行かなくてはならない。30分余計に見ておかなくてはいけない。予定起床時刻30分前だが、今起こさなくては・・。「ピピ!ピピ!」私の思いと同時に息子の目覚まし時計が鳴った。「早いじゃないか!」「うん、雪だったら車で行けないかもしれないからさ。早く起きて様子見なきゃと思って」そこまで予定を立てられるようになっていたのか・・・。そんな成長をみただけでも受験は価値があったとうれしくなった。事前に近所を走ってみた。かなりの積雪だが、幹線道路に出れば何とか行けそうだ。受験票をチェックし出発した。家を離れて大通りに出た。これで何とかなりそうだと安堵した瞬間「あっ!」息子の短くもやっちまった感溢れる奇声。「なんだ?」「ハンカチ忘れた!あと手袋」・・・「これを使えよ!」ハンドタオルとポケットカイロを手渡す。「ありがとう」 小一時間後、順調に会場に着いた。約16倍という高倍率。付き添い含め、テーマパーク顔負けの人・人・人。雪の中、寒さも加わって、殺気だった集団が傘をさし行進を続ける。その中に息子が吸い込まれていった。
3時間後再会した彼の表情は・・・現実という重いパンチを確実にくらっていた。息子よ!何事も経験だよ! 帰宅した豚児は、試験のことなど無かったかのように今度は雪と格闘した。ジャンプ台を作るのだという。その表情に塵一つなかった。2月4日。形は違えど、みんなに春が来ますように・・・。