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diary

2008年2月12日 悲しみを覆い尽くす精霊

2月3日から1週間と空けずに八王子は大雪となった。予報通り、いやそれ以上の積雪。午後からチラチラ降り始め、夕方には積もりそうな気配。夜の七時前にはバスがチェーンを装着した。アップダウンの激しい我が街。幹線道路のあちらこちらで、甘く見た車が立ち往生している。冬山に軽装で登ってとんでもないことになった・・そんな気分だろう。上りも下りもノロノロ運転だ。

先週の日曜は雪の中息子の受験。その結果がまたもや雪の朝に出た。今時の発表はインターネットだ。発表時間から15分程度は混み合うが、それを除けば便利なもの。豚児の予想通り、番号は・・・なかった。こんな時こそ外れてくれればいいものを。
「やっぱり・・当たっちゃったね・・・僕の予想・・」息子は明るく振る舞った。でも語尾は湿っていた。床に腰を下ろして雲の垂れ込める空に目をやる。幼いながらに、こみ上げるものを阻止しようと精一杯抵抗をしている。手に取るようにわかる。何と声をかけてあげればいいのだろう・・・。20秒の時が流れた。急に隣で大人しくしていた猫が「ミャ~」と声を発し、息子の肩に乗った。そして4本の足で、器用に肩を踏みはじめた。
「何すんだよ~!くすぐったいぞ~」涙声が乾いてくるのにさほど時間はかからなかった。猫が悪戯したあとはいつもなら厳しく尻を叩く息子も、優しく頭をなでている。猫はその手をひたすら、ひたすら舐める。それ以上その場に居られなかった。それ以上居たら嗚咽が漏れたはず。何という光景なのだ。とても偶然とは思えない。自分の仲間が心を痛めた時、一人ではないことを知らせ、あらん限りの愛情を示す・・・。こいつも立派に家族の一員なのだ。

その晩、息子と一緒に寝た。「今朝・・ナツ(猫)にはびっくりしたな・・」「うん、でも、うれしかった。駄目だったんだって時、悲しかったから。そうしたら・・あいつ、肩に乗ったでしょ。あんなの初めて!重かったけど・・何だか『俺を忘れんな!』って聞こえたようでさ・・そうしたら悲しくなくなった」「父さんにはこう聞こえたぞ。『おい!悲しむ暇があったら俺のトイレ掃除しろ!最近さぼってるぞ』てな!」息子が笑った。そしてこう結んだ。「父さん、僕・・・また頑張るよ。応援してね・・」悟られぬよう直ぐに息子に背中を向けた。今日は2度も目の前がぼやけた。

翌朝、2人でジャンプ台を作った。完成して何度も息子の背中を押した。心の中でこういいながら。「失敗は財産になる。いつでもお前の背中を押してやる。応援しているぞ~」


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悲しみを覆い尽くす精霊

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雪化粧

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明日へのジャンプ