2008年1月28日 直向き
日曜日、2つの「意地」に感動した。
1つは「大相撲初場所」みごと優勝した横綱白鵬に。3場所ぶりに復帰した朝青龍に対する東横綱の意地。5年半ぶり千秋楽での横綱相星決戦。「負けられない」プレッシャーは15日目まで重くのしかかってきた。2場所相撲を取っていなかったとは言うものの、朝青龍には22回優勝の実績がある。千秋楽結びの1番には48本の懸賞が掛かった。仕切りを重ねるほど、両力士の表情が険しくなってくる。立ち上がった。予想通りの力相撲。渾身の力を振り絞ってまわしを引きつけ合い、おいそれと勝負はつかない。両者の腕に疲れが見えてきたその時、朝青龍が吊りにきた。白鵬の体が浮き上がった。しかしそれを堪えた。そして逆襲の上手投げ。朝青龍の体が側転状態で土俵に転がった。勝ちを確認してから、仁王のような形相で15日間にわたる東の重圧を吐ききった。「強いのは俺なんだ」とその顔が吼えていた。敗れた朝青龍は20分間風呂から出ず、そのあと報道陣に口をきかなかったと言う。白鵬のこの言葉に意地を感じた「とにかく下がらないように・・・」。
2つめの「意地」は、第27回大阪国際女子マラソン。「トラックの女王」福士加代子がマラソン初挑戦。彼女は常識破りと言われていた。それは練習方法や1ヶ月という調整期間。さらには走った距離が最長約32キロ。1度も42.195キロを経験していない。スタート直後から予想通り独走。だが30キロで大幅にペースダウン。突然目の前が真っ暗になったのだと言う。ふらふらになりながらも走る。沿道の人が併走しながら励ます。次々に抜かれ、トラックに戻る直前で転倒。足が言うことを聞かないくらい衰弱していた。それでも気力で立ち上がる。その表情には驚いた。安らかな笑みまでたたえているのだ。純粋にゴールを目指す・・・その一念。そしてトラックに。優勝者へ送られた数倍拍手が起こる。そこからも苦難は待っていた。これまでトラックで転んだことなど皆無だったはずの福士が、1周するのに3回も転んだ。足から崩れるどころか、顔からアンツーカーに倒れ込む。それでも笑みを浮かべて起きあがる。「諦めない!」両膝は赤く擦りむけている。結局19位。ゴールにテープはなかった。確かに非常識の調整だったかもしれない。しかし「意地」を見せ、きっちり最後まで走り抜いた福士の姿に熱いものがこみ上げてきた。一所懸命の姿に格好悪さなどない。そこには崇高さすら宿ることもあるのだ。「弱気に勝つ、最後まで諦めない」またスポーツから教えられた。