3月9日 辞書特集 Part2 ゲスト:永江 朗さん
◆テーマ
『 男と女の日本語
―― 永江 朗 』
「所詮この世は男と女」。
前回好評を得た特集企画が1年ぶりに帰ってきた!
去年2012年3月3日の放送に続いて
辞書特集 第2弾!!
ゲストとして作家・永江 朗さんが再登場。
▲石川アナウンサーが手にしているのは
『男と女の日本語 (広辞苑の中の掘り出し日本語2)』(左手)
『新宿で85年、本を売るということ』(右手)
(画像をクリックすると拡大します)
『広辞苑の中の掘り出し日本語』続刊として
男女の機微に触れる
粋で 面白い日本語の数々を掘り出した
『男と女の日本語 (広辞苑の中の掘り出し日本語2)』が
去年9月に発表されました。
放送では本の中から
男・女・男と女 両方にまつわる言葉の意味を
どれだけ答えられるか――
弘兼憲史さんに出題!
ラジオをお聴きのあなたは
いくつ答えられましたか??
■“男”にまつわる言葉
◆桂男(かつらおとこ)
★意味:美男子。
中国の伝説では月に「桂」の木が生えている。
中国の「桂」=シナモン。
永江 「月にいるような美しい男――
“月よりの使者”という意味だと思いますけど
“シナモンの香りがする男”が
現代的な解釈かもしれないですよね」
◆一期の男(いちごのおとこ)
★意味:一生離れまいと思う男。夫のこと。
「一期一会」の「一期」の男のこと。
◆山水男(さんすいおとこ)
★意味:貧相な男。おちぶれた姿の男。
「山水」には「山と水」の意味のほか
「ものさびしい」「わびしいさま」
「みすぼらしいさま」という意味もある。
永江 「いかにも枯れて木枯らしが吹いてそうな
風景ですから、そういう感じの男ですね」
弘兼 「そこからきたのかもしれないですね」
石川 「“枯れた感じの良さ”もありますものね」
◆男は三年に方頬(おとこはさんねんにかたほお)
★意味:男はめったに笑わずに威厳を持てという意味。
◆折れ込ます(おれこます)
★意味:身ごもらせる、妊娠させる。
辞書には 1 折れて内部に入る
2 身籠る 妊娠する ――とある。
永江 「どうして“折れて内部に入ると
“妊娠する”のかは謎ですね」
■“女”にまつわる言葉
◆おさすり
★意味:女中さんを兼ねたお妾さん。
◆毛抜き女
★意味:主人を代えて転々とするお妾さんのこと。
永江 「お妾さんに捨てられた男の方が
絶望のあまり脱毛するのかと
思ったんですけど、そうじゃない…。
よく“ケツの毛まで抜かれる”って言われますよね。
そういうことでしょうね」
◆生女子(なまおなご)
★意味:まだ色気が残っている女性のこと。
「生女」の場合、その意味は
1 未熟な女性 2 身分の低い女性。
「子」の有無により意味は大きく異なります。
永江 「“おなご”が“生”だと
“おなご”の状態が“生”で残っている。
ちょっと“レア”という感じですね」
弘兼 「60過ぎてもまだ“女”の部分が残ってる。
『黄昏流星群』の世界じゃないですか!」
◆申し妻(もうしづま)
★意味:妻を授けてもらいたいと神仏に祈ること。
★意味:また、それによって得た妻のこと。
永江 「今の“婚活”ですよね」
弘兼 「独身の男に『お前“申し妻”しろ』
という言い方ができるわけですね」
◆女の足駄にて造れる笛には秋の鹿よる
★意味:女性の色香に男は迷いやすい、という意味。
女性の履物(足駄)で作った「笛」には
秋の鹿が寄ってくる――。
弘兼 「足が臭い女・・・は違うか(笑)」
永江 「“女性の色香に男は迷いやすい”
ということなんです。
でもこれは奇妙ですよね。
鹿は足フェチなんですね」
石川 「男性自身は“加齢臭”といって
嫌がるかもしれないですけど、
女性が嗅いで『好きな匂い』と
思うことはあります。靴の匂いも」
弘兼 「好きな女の臭い足・・・いいかもしれない!
タンパク質が分解された匂いですよ」
永江 「あくまで“色香”ですから。
“臭い”というのは・・・」
■“男と女”にまつわる言葉
◆戯石(たわし)
★意味:淫らなさま、好色である という意味。
永江 「『遊びだったのね、あなた』
ということでしょうかね」
石川 「『この戯石!』みたいな言い方が
あるんですかね?(笑)」
弘兼 「『この戯石者!』
それは“戯け者”ですね(笑)」
◆新手枕(にいたまくら)
★意味:男女が初めて交し合う手枕。
★意味:はじめての契り という意味。
初枕(ういまくら)、新枕(にいまくら)と同じ。
永江 「“初めて交し合う手枕”っていいですね。
単に枕を並べるわけじゃなくて
“手枕”ですからね」
弘兼 「ちょっと色っぽいですね」
◆夜離る(よがる)
★意味:夜の通いが絶えること。
★意味:夫が妻のところへ通ってこなくなること。
夜の通いが絶える――。
その昔の結婚のかたちは、
普段は別居して、男が妻の所へ通う形式。
通いが絶えるということは・・・
弘兼 「男女の間が終わっちゃう、と?」
永江 「フェードアウトですよね。
『源氏物語』とか平安の文学に
こういう言葉がたくさんありますね。
女性としては悲しい気持ちなんです」
なお 同じ「よがる」でも「善がる」だと、
1 善いと思うこと、満足
2 嬉しがる 愉快に思うこと
3 快感 を表す という意味。
石川 「“独り善がり”ですか」
弘兼 「そうかそうか!
自分で満足することですからね」
◆花心(はなごころ)
★意味:移りやすい心。あだ心。浮気心。
華やかな心――という意味もあるが、
「花」には“うわべだけで真実がない”という意味も。
永江 「花にはいいイメージだけかと思ったら
必ずしもそうではない」
■生きている辞典「大辞泉」
12時台には小学館の「大辞泉」編集長
板倉
“生きている辞典”大辞泉の特長をご紹介くださいました。
◆17年ぶりの改訂版『大辞泉』第二版
去年2012年秋「大辞泉」がリニューアルされ、
新語や新しい意味づけなども採用された
25万語収録の書籍(上下巻)と、
2015年までデータが更新されるDVD-ROM(25万7千語)が
セットになって登場。
総重量は 約6kg!
(今年2013年12月31日までの特別価格12,000円+税)
◆DVD版は2015年まで3回更新
データが更新されると
最新データをダウンロード可能。
板倉 「2015年には28万語くらいになると思います」
「ヒッグス粒子」とみられる新粒子の発見が
去年話題になりました。
「大辞泉」第二版(書籍版)では
「未発見」と記載されていますが、
今後“発見された”という発表があれば
DVD-ROM版では修正・加筆が可能。
◆デジタル化により、古い言葉の削除は不要に
板倉 「紙の数が関係ないですから
削ることは まずないです。
“チョベリバ”もいまだに残ってます」
◆デジタル辞書の可能性
将来、デジタル辞書はどのような進化を遂げるでしょうか?
板倉編集長が語ったデジタル辞書の未来とは?
類語(意味の似通った語)の配列を
「永江仕様バージョン」、「弘兼仕様バージョン」に
ボタンひとつで切り替え可能に??
(たとえば)永江さんが「生女子」の次に
関連すると思われる「●●」という言葉を引いた――
このようなデータを集計することで、
類語の配列(語の並び)を永江 仕様に
切り替えることが可能になるかもしれません。
板倉 「類語辞典のアドオンデータとして
売ることができる。
『永江さんの類語辞典を使いたい』と
ボタン一つで類語の配列をパッと変えられる。
それがデジタルの面白いところです」
弘兼 「面白いですね、それはね」
永江 「“エッチな言葉”ばっかりだとか(笑)」
石川 「脳の中が透けて見えるというのは
怖いかもしれないですね」
■永江 朗さんの最新情報
■『男と女の日本語 (広辞苑の中の掘り出し日本語2)』
(バジリコ/1,400円+税/発売中=2013年2月発売)
バジリコのウェブサイトはこちら
さらに!『広辞苑の中の掘り出し日本語』第3弾 執筆中!
永江 朗さんは現在『広辞苑の中の掘り出し日本語』の
第3弾を執筆中。
次回テーマは「今度はもっと渋い」“花鳥風月”。
今年夏頃の発表を目指して準備中です。
■『新宿で85年、本を売るということ』
(メディアファクトリ−/740円+税/発売中=2013年2月発売)
メディアファクトリーのウェブサイトはこちら
永江 「(紀伊國屋書店創業者)田辺茂一という人が
なぜ本屋さんを始めたのか、
どういう人だったのか、その謎を巡って
聞いたり調べたりしてみました」
■お送りした曲目
◆男と女
(弘兼セレクション/映画『男と女』より)
◆女と男のいる舗道
(弘兼セレクション/映画『女と男のいる舗道』より)
◆月のしずく / 徳永英明
◆言葉はさんかく こころは四角 / くるり
◆魔法のコトバ / スピッツ
◆贈る言葉 / 海援隊
◇永江 朗さん、板倉 俊さんの「好きな言葉」(PC版)はこちらをご覧ください。
◇前回2012年3月3日、永江朗さんご出演
「辞書特集 第1弾」の模様はこちらをご覧ください。
◇過去の放送レポート バックナンバー(PC版)はこちら