1月19日 ゲスト:なかにし礼さん
◆テーマ 『 光あるうちに 光の中を歩め!
―― なかにし礼 』
この日のゲストは弘兼憲史 さんが自身の漫画
『黄昏流星群』の“師”と崇める
作詞家で小説家のなかにし礼さん。
なかにし礼さんが作詞を手掛けられた
数あるヒット曲をおかけするとともに
御本人から制作当時のエピソードを語っていただく
“なかにしソング”大特集!
また去年、切らない手術で克服された
食道がんの、がん発覚から仕事復帰までの
体験についてもお聞きしました。
■レコード大賞 受賞作品 誕生秘話
11時台はなかにし礼さんが作詞を担当された曲の中から
「日本レコード大賞」受賞曲を中心におかけしました。
◆北酒場 / 細川たかし
(1982年「レコード大賞」受賞)
細川たかしさんのデビュー曲
『心のこり』を作詞されたなかにし礼さんが
7年後に細川さんの曲を担当。
なかにし 「演歌ですけど歌詞は七五調でもなく、
好きなように書いた曲」
◆天使の誘惑 / 黛ジュン
(1968年「レコード大賞」受賞)
黛ジュンさんの曲は、デビュー曲『恋のハレルヤ』
さらに『霧のかなたに』を作詞。
そして4枚目のシングル『天使の誘惑』が大ヒット!
レコード発売月に二十歳の誕生日を迎えるアイドルに
“セクシー”な歌を歌わせるわけにいかない――
という状況下、
“口づけ”をさせずに、
そのニュアンスを出すことに成功。
なかにし 「“人さし指で口づけをした人”
そのイメージが最低、許される(範囲)」
弘兼 「人さし指を添えて、
その上からキスをしたということですよね」
なかにし 「そこがチャームポイントになって、ね」
弘兼 「マネしたことあります。
大学の寮で、男とね」
◆今日でお別れ / 菅原洋一
(1970年「レコード大賞」受賞)
1967年に『嘆きのタンゴ』のB面としてリリース後
1969年の暮れに再発売され大ヒット。
翌70年の「レコード大賞」を受賞しました。
弘兼 「2番が心に沁みて、
『曲がったネクタイ直させてね』って
漫画の中でも使わせていただきました」
菅原洋一さんの歌唱力も素晴らしい作品です。
なかにし 「“ささやき系”の歌を歌わせたら
やっぱり最高ですね」
なかにしさんはこの曲がヒットした昭和40年代を
団塊の世代が“同棲”を始めた時代と指摘。
弘兼 「そのあと“別れ”が来るんですよね」
なかにし 「そこらあたりの描写です」
■リクエスト トップ3
◆グッド・バイ・マイ・ラブ / アン・ルイス
(1974年発表)
この日、リスナーの皆さんから番組に寄せられた
リクエスト曲の中の第3位が、
アン・ルイスさんの初のヒット曲『グッド・バイ・マイ・ラブ』。
なかにし礼さんがアン・ルイスさんと出会った場所は
なかにしさんが散歩をしていた横浜の外人墓地。
弘兼 「一見してスターになれるというイメージが(あった?)」
なかにし 「だって可愛いもの」
弘兼 「そういう形で見つけられるんですね」
石川 「出会うべくして、だったんですね」
◆みんな誰かを愛してる / 石原裕次郎
(1979年 テレビドラマ『西部警察』エンディングテーマ)
リスナーリクエスト第2位は
石原裕次郎さんが歌うテレビドラマ『西部警察』の
主題歌(エンディングテーマ)『みんな誰かを愛してる』。
車が大破、爆発、銀行強盗…など
殺伐としたシーンが繰り広げられたあとに
タイトルロールで流れるこの曲は、
石原裕次郎さんから電話で作詞依頼を受けたそうです。
『観た人の気持ちがスーっとが和むような歌が欲しいんだよな』
なかにし 「平尾昌晃さんと一緒に
この曲を書き上げたわけです。
そういう意味で、
企画として狙いは正しかったと思いますね」
◆石狩挽歌 / 北原ミレイ
(1975年「日本作詞大賞」受賞)
放送途中までリクエスト1位は
『みんな誰かを愛してる』でしたが
それよりも先におかけした『石狩挽歌』が
オンエア後に票を伸ばし逆転でトップに。
お聴きいただいた後に
「好きな曲」として思い出を綴った投稿や、
「もう一度聴きたい」という声が多く寄せられ
このような意外な結果を生み出しました。
(番組後半でおかけした場合、断トツトップだったかもしれません)
海猫(ごめ)筒袖(つっぽ)やん衆 笠戸丸
なじみの薄い言葉が盛り込まれた『石狩挽歌』は
あえて現地の言葉を用いて、説明を一切しない
という“覚悟”を決めて書き始めたそうです。
なかにし 「説明は一切しない。わからなくてもいい。
わかる言葉はたった一つ
『オンボロロ』というニュアンスさえ
わかってくれれば、あとはいい
という想いで書いたんです」
この曲には、なかにし礼さんのお兄さんが
ニシン漁を始めて失敗してしまった
幼年期の体験も詰まっています。
また、歌謡曲に文学性を求めた
クオリティの高い作品でありながら、
ヒットさせる――
この二つの願いを果たされた作品でもあります。
なかにし 「だから恋愛の歌でもなければ
何でもない、ただ老婆が浜辺で
昔を懐かしんでるという情景の歌ですけど
曲もいいし、北原ミレイさんの歌もいいいし
うまくいったな、と思ってます」
弘兼 「素晴らしい歌ですよね」
■「日本作詞大賞」受賞――『櫻』
◆櫻 / 氷川きよし
(2012年「日本作詞大賞」受賞)
2011年3月11日の東日本大震災――。
その時、作詞家・小説家として
強い無力感を抱いたというなかにし礼さん。
それ以来、人生観が変わり、
『櫻』を書く際には
なかにし 「“たった一人の人を励ましたい”
――という想いでを書いた曲。
春に、櫻とともに
恋しい人、大事な人が
生き返ってくるに違いない――
そういう想いを抱いてくださったら
嬉しいなと、そのことを表現したんです」
“薄紅色の裸が横たわる”歌の出だし。
(歌詞ではありません)
なかにし 「“女体”というと
『エロチックじゃないか』と思われたら
困っちゃうんだけど、
書き手の僕がそれを感じたんで、
主人公の男の子が最後は
櫻と一体となって眠っていく――
“永遠との合体”というものを
描いてみたかったんですね」
■食道がんを克服
なかにし礼さんは、去年春、
食道がんを公表されました。
そして闘病生活に入り、秋には仕事復帰。
なかにしさんは毎年3月に検査をしていましたが
おととし2011年は、東日本大震災が発生し
「病院に行って胃カメラを…という気分になれなくて」
検査を行いませんでした。
翌2012年2月末、
食欲がなくなる異変を感じて病院へ行くと
4センチ大の腫瘍が見つかりました。
なかにし 「前年の3月に診てもらえば、
初期の段階だったかもしれない。
発見された時は1年3カ月たっている
成長したガンがあったんです」
手術をすすめられましたが、
過去に心臓病を患い、
全身麻酔には耐えられない――と手術を拒否。
そこで出会ったのが
インターネットで独自に探した「陽子線治療」。
なかにし 「放射線じゃなくてビームなんですね。
患部に直接あたって、
周囲の心臓や肺には
極力被害を与えないで
治療を施すことができる。
そこで仕事を終えると消えるんですよ」
5月から週5回(治療自体は30分)
6週間=30回にわたる治療治療を開始。
「治療終わりました。多分大丈夫でしょう」と語る先生。
3週間後に検査をすると
「消えてるんですよ。きれいに“ない”の」
■なかにし礼さんの最新刊
なかにし礼さんが、がん治療で体験されたことは、
去年12月に発売された著書に綴られています。
◆『生きる力 -心でがんに
(2012年12月20日刊行/講談社/952円+税)
なかにし礼さんの最新情報は
なかにし礼 オフィシャルサイトをご覧ください。
■お送りした曲目
◆AMBITIOUS JAPAN! / TOKIO
◆北酒場 / 細川たかし
◆天使の誘惑 / 黛ジュン
◆今日でお別れ / 菅原洋一
◆櫻 / 氷川きよし
◆石狩挽歌 / 北原ミレイ
◆グッド・バイ・マイ・ラブ / アン・ルイス
◆みんな誰かを愛してる / 石原裕次郎
(テレビドラマ『西部警察』主題歌)
◆恋のフーガ / ザ・ピーナッツ
◆時には娼婦のように / なかにし礼
◆風の盆恋歌 / 石川さゆり
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