2月25日 ゲスト:篠山紀信さん
◆テーマ
『 写真は時代を映す鏡 篠山紀信 』
ゲストは写真家・篠山紀信さん。
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■『ATOKATA』
最新写真集『ATOKATA』は、
「写真家は時代の写し鏡」という篠山紀信さんが
独自の視点で東日本大震災の被災地を切り撮った写真集。
「その時代の人・もの、
その時代に起こったことを写すのが写真家」
と語る篠山紀信さんですが、
去年3月11日の大震災は
写真家として「どう受け止めて、どう表現しようか」と感じたそうです。
震災発生から約50日後、篠山さんが初めて
被災地=仙台・荒浜地区を訪れ、
目の当たりにした光景――
依然として水が引いておらず
静かに漂う水と 横たわる木・・・
篠山 「すごい美しいんです。
よく見ると、木の肌が剥けていたり、
水の中に瓦礫があったりするんですけど、
この静かな水がこんな恐ろしいことをしたのか
――というような思いがして・・・」
『ATOKATA』を見終わった方は決まって
“風景がきれいですね。
でも、こんなことを言うのは不謹慎ですね”
という感想を口にするそうです。
篠山 「それはその通りで、
水の中にも、がれきの中にも
亡くなった方がおられるかもしれないし、
ただ“美しい”っていうことではないんですけど
自然が、自らの自然をすごいエネルギーで壊して
また新しい自然を作ったんだ――
っていう風に見えたんですよ。
そうすると畏怖と畏敬の念を持って
自然に対峙することができるようになったんです。
そうすると写る写真が全然違ってくるんですよ」
「一瞬にして自然が全てを壊した――
そのエネルギーの怖さがあると同時に
その自然が“新しい自然”を作った――
というところで見た結果がこの写真集です」
『ATOKATA』の表紙に写る場所(=埋立地)に
暮らしていた方が写真集を見て連絡をされたそうです。
『この写真は私の家の前の風景です』
その方は
“人間が自然をコントロールできると思っていたら
ただ一回の津波によって元通りになった。
自然の力はすごい――ということを目の当たりにして
それを生涯忘れないために、写真を送ってくれないか”
と、望まれました。
篠山 「被害に遭われた方が
むしろ人間の方が自然をないがしろにして
自然の力はすごいんだ――ということを
忘れないために『この写真が欲しい』って
言ってくれたのは、やっぱり
この写真を撮ってよかったと思うんですよね」
弘兼 「『ATOKATA』というタイトルも
“跡形もなくなった現実を見ましょう”
という意味でつけられたんですね?」
篠山 「そうです」
■写真集『ATOKATA』
日経BP社から発売中(5,800円+税)
■あの人の撮影エピソード
■山口百恵さん
篠山紀信さんが山口百恵さんに初めて会ったのは
百恵さんが14歳の時。
以来、レコードジャケットの撮影をご担当。
数多くの作品を残してこられ
去年には篠山さん初のエッセイ集
『元気な時代、それは山口百恵です』(講談社)も発表。
篠山 「普通の子で、ちょっと陰りがあって
“ピカピカ”という感じじゃないんです。
それがすごく色っぽいんですよね。
不思議な子だなと思ってました」
弘兼 「『ひと夏の経験』を歌ってる時は
顔は子供、歌の内容は色っぽい感じで
最終的に
姿全体で色気が漂ってる感じになりましたよね」
篠山 「彼女自身の才能ですね、あれは」
撮影の度に、紀信さんの前には
“前よりちょっと違う大人の百恵さん”が現れ
新たな一面が引き出される――
この繰り返しで引退まで仕事をご一緒されたそうです。
篠山 「『70年代といえば山口百恵』
時代の顔になった人を撮れたのは
写真家として幸せなことでしたね」
■宮沢りえさん
1991年、宮沢りえさんが18歳の時に発売された
ヘアヌード写真集『サンタフェ』は
当時大きな話題になりました。
篠山 「りえママに、本当に冗談で
『18になったんだから裸でも撮らなきゃ』
と言ったら
『撮るんなら連休の後かな…』と
そういうことから始まったんですね」
アメリカ・サンタフェは
ジョージア・オキーフ、アルフレッド・スティーグリッツら
著名な画家・写真家が作品を作った場所。
篠山 「一種の“写真の聖地”なわけです。
聖女のように美しいりえちゃんを撮るなら
聖地しかないだろう、と
サンタフェを選んだんです」
また、撮影当初、宮沢りえさんのお母さんに
「こんなの撮りにきたわけじゃないわよ」と
怒られた(!)エピソードもご紹介いただきました。
篠山 「寒くて鳥肌がたっちゃうから
ガウンを着ていて、撮るときだけ
パッとはずして、またパッとかける」
■吉永小百合さん
吉永小百合さんの映画出演100本記念作品
「鶴の恩返し」を題材にした
『つる-鶴-』(1988年・市川崑監督)のポスター撮影が
鶴 が姿を見せる北海道・釧路で行われました。
篠山 「自然の鶴ですから、本当は望遠レンズで
遠くから撮らないと逃げちゃう」
ところが、雪の舞う中、
白い着物を着た吉永小百合さんが近づいても
鶴は逃げることなく・・・
篠山 「鶴と同化しちゃう。
あれは いい写真が撮れましたよ。
あんなにいいと“合成したのか”と
言われますけど、
吉永さんの気持ちが通じたんでしょうね」
弘兼 「鶴もわかるんですかね、
危害を加えない人を」
石川 「もしかしたら鶴の方に
何か恩義があったのかもしれないですね」
■“写真の神様”が降りてきた! 50年の写真家生活の集大成!
■『篠山紀信 写真力 THE PEOPLE by KISHIN展』
■6月30日~9月17日
熊本市現代美術館
■10月3日~12月24日
東京オペラシティアートギャラリー
■2013年12月~2014年3月
新潟県立万代島美術館
「『これだ!』という写真が撮れるときは
写真の神様が降りて来た時だと思うんです」
◆写真の神様が降りてくる時の三要素◆
■撮る相手にリスペクトする気持ちを持つ
■その場の空気を読み、リラックスさせる
■自分の感受性・エネルギーを最大限ヒートアップさせる
篠山 「そういうことが起こると、
たま~に写真の神様が降りてくる。
それは信じられないほど
いい写真なわけですよ。
50年にわたってやった中で
『この写真は降りてきたよな』
という写真だけを集めて
展覧会をやろうと思ってるんですよ」
▲ご自身が写真を撮られるのは「嫌い」とおっしゃる篠山さんでしたが
生放送中にカメラに目線を送ってくださってパチリ
そのほか篠山紀信さんの最新情報は
篠山紀信公式サイト|SHINOYAMAKISHIN.JPでご確認ください。
■お送りした曲目
◆色づく街 / 南沙織
(弘兼セレクション)
◆スターティング・オーヴァー / ジョン・レノン
(弘兼セレクション)
◆ブルー・ライト・ヨコハマ / いしだあゆみ
(RN・孝夫さんが初めて買ったレコード)
◆横須賀ストーリー / 山口百恵
(篠山紀信さんの思い出の1曲)
◆翼をください / 赤い鳥
◇篠山紀信さんの名言・好きな言葉(PC版)はこちらをご覧ください。
◇過去の放送レポート バックナンバー(PC版)はこちら