11月5日 『イグ・ノーベル賞』特集 ゲスト:志村幸雄さん
◆テーマ 『笑う科学
イグ・ノーベル賞大国 ニッポンの科学力 』
ゲストに
『笑う科学 イグ・ノーベル賞』(PHPサイエンス・ワールド新書)著者
技術評論家で金沢大学講師の
志村幸雄さんをお招きして
『イグ・ノーベル賞』と
“笑う科学大国”ニッポンが誇る技術力を徹底検証!
▲志村幸雄さんは、初めて買ったレコードのジャケットを手に。
石川アナウンサーが手にしている本は志村さんの著書
『笑う科学 イグ・ノーベル賞』『世界に勝てる!日本発の科学技術』
(いずれも PHPサイエンス・ワールド新書)
■イグ・ノーベル賞とは
「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」
に対して与えられる『イグ・ノーベル賞』は
1991年に創設され、
カラオケや、
犬の声を理解する「バウリンガル」の受賞で、
日本でも広く知られるようになりました。
志村 「役に立たないものもたくさんあります。
奇妙奇天烈なもの、パロディ的なものが多いです」
これまで日本人の受賞者は16組。
国別受賞者の比率では、かなり高い確率。
今年2011年も日本人受賞者が誕生し、
5年連続の受賞となりました。
ただし、賞金はなく、
授賞式に出席するための旅費は
受賞者の自己負担です。
■『イグ・ノーベル賞』の名称の由来
「ノーベル賞」に反語的な意味合いの接頭辞を加えた
“もじり”であると共に
「卑劣な・あさましい」を意味する“ ignoble ” とも掛けています。
■受賞につながる研究の傾向を 6 のカテゴリーに分類
本家『ノーベル賞』は6部門ですが
『イグ・ノーベル賞』は
40を超える部門があります。
工学賞、物理学賞、医学賞、平和賞、
化学賞、文学賞、心理学賞、生物学賞、
さらには
経済学賞、統計学賞、交通計画賞、健康管理賞
公衆衛生賞、環境保護賞、生物多様性賞学際研究賞・・・など。
弘兼 「たしかに賞金を出さないんだから、
いくら増やしても、どうということはないですね」
このように『イグ・ノーベル賞』に数多くの賞がある中で
志村幸雄さんは、受賞対象となる研究を
独自に6のカテゴリーに分けて考えています。
1 どうでもいいことの研究
■「思春期の少年にとって、鼻をほじくることは普通の行動である」という
医学的発見を突き止めた――(2001年 公衆衛生賞)
■「へそのゴマの研究」――(2002年 境界領域研究賞)
志村 「どうでもいいことを“どうでもよくない”とばかりに
生真面目に研究するのも『イグ・ノーベル賞』の大きな特徴です」
弘兼 「大好き、大好き!」
2 科学が見落としていたもの解明
■「なぜシャワー・カーテンは内側にふくらむのか」という疑問に対する
部分的な解答――(2001年 物理学賞)
■大量の髪の毛、糸、その他ほとんどあらゆるものは、
ひとりでにかつ必然的に、互いに絡まってもつれてしまうことを
数学的に証明――(2008年 物理学賞)
3 非合理的なものを科学的に解明
■行動経済学による研究
1万円を1回落とすのと、5千円を2回落とすことの
精神的影響の大きさ比較
■高価な偽薬(プラセボ)は安価な偽薬よりも
効力が高いことを示したことに対して千(2008年 医学賞)
■日本武尊の銅像には鳥のフンがつかない
兼六公園の
鳥のフンがないのはなぜか――??
金沢大学の広瀬幸雄教授が調査を行うと、
銅像の内部にヒ素が含まれていることがわかり、
“銅”と“ヒ素”の異種金属が接触することで
電位差が生じ、電流が流れることが
鳥のフンがないことに関係している――と解明。
では、なぜ“ヒ素”が混入したのでしょうか?
志村 「銅を溶かすために、ヒ素を入れることで溶融しやすくなる――と。
明治初期でしょうか、『日本武尊』の像にヒ素が入った・・・。
そういう科学が見落としていたことを
科学的に解明したんです」
4 非常識な対応
■しつこくひとつのことにこだわる研究
■熊から身を守るために開発を研究した保護服の研究
――(1998年 安全工学賞)
5 おもしろ発明
■おならなどの臭いが広がる前に除去するために、
交換可能な炭素フィルターが付いている気密性の下着の発明
――(2001年 生物学賞)
■犬と放せる機械バウリンガル、カラオケなど
6 おもしろ発見
■象の体表面積の算出――(2002年 数学賞)
象の前足の太さを計測することで
正確な体表面積が推定できることを発見。
■わさびの匂いで警報機! 2011年 日本人受賞者インタビュー
わさびの匂いによる警報システムを開発し、
今年「イグ・ノーベル賞 化学賞」を
共同受賞された
日本人7人のおひとり、
香りマーケティング協会理事長・田島幸信さん に
電話でお話を伺いました。
田島 「世界に認められたことがうれしい。
警報機が広く知られて感謝しています」
田島さんが“香り”“匂い”に関する会社を設立した際に生まれたアイディアをもとに
住宅用火災警報器と
わさびの匂いで目を覚ますシステムを結びつけたそうです。
このシステムは『ガス』を出すため、
日常の食品として食べられていることから誰にでも受け入れられる
――として“わさびにたどり着いたのですが・・・
どうして“わさび”の匂いが、寝ている人の神経を刺 激するのでしょうか??
田島 「お医者さんの見立てによりますと
“痛覚”――痛みの神経を刺激している、と。
ほっぺたをひねるようなイメージで起きることがわかったんです」
志村 「三叉神経ですね」
田島さんに、イグ・ノーベル賞受賞にもつながる“コツ”を伺いました。
■自分がやりたいことを見極める
■どんなことに役立てるか――目標・目的を明確に
■しぶとくやることが大事
田島幸信さんの今後の研究のテーマは、
さらに“香り”を突き詰め…
『匂い と マーケティング』。
田島 「“カラーコーディネーター”
“環境コーディネーター”がおられるので、
同じように日常生活で“匂い”を使うにはどうしたらいいのか、
あるいは『過ごしやすい空間』に香りを使っていただく…」
なお、田島さんは『イグ・ノーベル賞』の
受賞を目指していたのではなく、
連絡を受けて
初めてご自身の受賞を知ったそうです。
田島 「連絡がきて驚きました」
■受賞候補の日本人研究者
日本は「イグ・ノーベル賞」候補の宝庫!
志村幸雄さんに、今後の「イグ・ノーベル賞」受賞候補に挙げられる
研究を伺いました。
◆蜘蛛の糸からバイオリンの弦
蜘蛛の糸は、同じ太さならば鉄よりも強いことがわかっています。
1メートルの長さの蜘蛛の糸 1万本を束ねて
1本のバイオリンの弦を作ることに
奈良県立医科大の大崎茂芳 教授が成功しています。
◆青いバラの誕生
「青いバラ」――「Blue Rose」を辞書で引くと
「不可能・ありえないもの」とあります。
(元々、青の色素がないため)
しかし、遺伝子組み換え技術により実現。
石川 「辞書を変えないといけませんね」
◆便に含まれる細菌から健康チェック
理化学研究所の
6千人の便を集め、腸内細菌――便に含まれる細菌から
健康状態をチェックし病気の早期発見に役立てる研究を行っています。
志村 「人間のうんちというものを科学的に明らかにする(研究です)」
弘兼 「それは『イグ・ノーベル賞』じゃなくて
『ノーベル賞』でいいですね」
■お送りした曲目
◆鉄腕アトムの歌
(弘兼セレクション)
◆ドラえもんのうた / 大杉久美子
(弘兼セレクション)
◆さよなら人類 / たま
◆パワー・オブ・ラヴ / ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース
(RN・喜世子さんが初めて買ったレコード)
◆新世界より (ドボルザーク)
(志村幸雄さんが初めて買ったレコード)
◆青春に乾杯 / ミッシェル・デルペッシュ
◇志村幸雄さんの名言・好きな言葉はこちらをご覧ください。
◇過去の放送レポート バックナンバーはこちら