12月11日 ゲスト:川口淳一郎さん
◆テーマ:『世界初の快挙!はやぶさ 奇跡の生還の舞台裏!』◆
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地球から約3億キロメートル離れた小惑星イトカワへ――。
計画開始から15年以上、打ち上げから7年・・・
60億キロを旅したはやぶさは今年6月、地球へ奇跡の帰還を果たし、
はやぶさに搭載した帰還カプセルが持ち帰った微粒子は
小惑星イトカワのものであることが確認されました。
ゲストには、探査機はやぶさプロジェクトマネージャー
JAXA(宇宙航空研究開発機構)教授の
川口淳一郎さんをお招きして、
小惑星からサンプルを持ちかえる
世界初の偉業を成し遂げ、
故郷地球の空に散った…
はやぶさ 奇跡の帰還の真実、
はやぶさへの想いの数々を伺いました。
はやぶさは次々に降りかかる困難をいかに乗り越えたのか――
そして宇宙開発の未来とは――。
■なぜイトカワを目指したのか?
往復の宇宙飛行ができる天体は、わずかに10個程度。
その中で、2番目に簡単に往復できる天体として
“見る角度によるとラッコにしか見えない”イトカワが選ばれました。
大きさは、長い距離で540メートル。
宇宙から見たら“点”のような小さな天体。
川口 「実は、着いたこと自体、我々は大変誇りに思ってるんです」
■微粒子で何がわかるのか?
「地球の内部がどのような物質でできているかを知ることが課題」(川口)
地球の中心核は熱で融解した液体鉄と考えられています。
重い物質は沈み、軽い物質が上(表面)へ。
そのため、表面を掘っただけでは地球の内部はわかりません。
川口 「それを知るために小惑星に行くんです」
小惑星の集合体が地球になった――と考えられることから
(地球のように)溶けなかった天体は重い物質も軽い物質も混在。
小惑星を調査することで、
太陽系の“元々の材料”を知ることができ、
年代を分析して“いつできたものか”がわかる――。
川口 「太陽系の昔を知ることができるんですね」
■数十年後の新発見に期待!
大きさは100分の1ミリ以下という微粒子。
もちろん、肉眼では見えません。
特殊なへらで かきとり調査をしますが、
全てをかきとることはせず、一部は意図的にサンプルを残すのだそうです。
これは(30年おけば)30年後の最新技術での分析が可能になるから。
数十年後に“新発見”が期待でき、
“JAXAの発表”に世界が注目する未来がやってくるかもしれません。
なお、分析力の世界的レベルのトップはアメリカ。
日本が追いつく日は訪れるのでしょうか――?
川口 「妙な言い方ですけど、ようやく“国産”の試料がとれたことですから、
これで大いに進んでほしいと思います」
■トラブルの連続から奇跡の生還へ
◆イトカワ着陸
はやぶさが降りられる場所は
半径100メートル、起伏は1メートル弱の場所とされ、
当初は3箇所あると考えられていました。
しかし、地表は想定以上に“ゴツゴツ”していて
唯一「ミューゼスの海」と呼んだ幅40メートルの場所しかなかった・・・
さらに、当初 組み込まれたプログラムでは着陸不可能と判明。
そこで、専門家が集まりアイデアを出し合った結果
コンピューターに任せていた処理に、
あえて人間を介在させることで爆発的に進展。
弘兼 「なるほど、コンピューターより人間が入った方がよかった――」
川口 「面白いですよね」
◆最初の着陸
はやぶさに搭載された障害物を検出するセンサーが何かの反射に反応し
「障害物がある」と判断。
“地上からの指令を待ち状態”になり、その間、2度3度バウンドし着陸。
(座り込む状態に)
この1回目の着陸時は砂の採取を断念。
◆ラストチャンスも予期せぬ事態に・・・
2005年11月中に地球に向けて出発しなければ帰還できない――という
タイムリミットが迫る2005年11月26日――ラストチャンス。
サンプル採取の方法は、地表に弾丸を撃たせ、舞い上がった砂を採取する計画。
しかしプログラムの問題から
「弾丸発射」ではなく「発射回路を“安全”側に戻せ」という
指令が先に届くことになり・・・
川口 「弾丸を撃てば、大きな物体でも速い速度で跳ね返って、捕獲されますよね。
ところが(弾丸を撃てず 着陸による)遅い速度でぶつかりますから
かなり小さなものでないと、(衝撃で)飛び上がってこない。
飛び上がってくるものがあるとすれば 微粒子しかないということは
1年半か2年前には予測していました」
◆行方不明 ~ エンジン故障
「はやぶさはいっぺん、死んじゃったんですね」(川口)
ロケット燃料が漏れ出したことが原因で
太陽の方向を向けなくなったはやぶさからの信号が途絶え・・・
救出すべく、必死に解析、いろいろな指令を巧みに工夫――。
やがて太陽の光がパラボラアンテナに当たり、
通信可能の状態となりますが、
次に待っていたのはエンジン停止――。
4台のエンジンは全て寿命が尽き、2009年11月には動かなくなりました。
そこで・・・
エンジンの壊れていないところ同士をつないで運転する――という
試験すらしていない奇策を駆使!
川口 「動くかどうか際どかったんですけど、なんとか動き出したんですね。
工夫をしてもらった方に頭が下がりますよね」
◆大気圏再突入
「6月13日――最後どこまでできるのか、我々自身も
『これは挑戦だな』と思っていました」(川口)
大気圏突入の際、熱に耐えることはできるのか――。
1メートル四方のカプセルにかかる熱量は
電気ストーブ1万5000台分。
弘兼 「もう、想像できないです…(笑)」
川口 「周りでご覧になっていた方は
最後パラシュート開けば終わりと思ってたかもしれません(笑)
そこは、われわれにとって大きな“ジャンプ”だったんです」
結果は……展示されたカプセルをご覧になった皆さんはご存じのとおり
耐熱シールドが見事役割を果たし、カプセルは無事回収されました。
石川 「きらめきながら夜空に消えていったはやぶさ…
みんな『ありがとう!』という想いで見届けてましたよね」
■快挙の陰に・・・下町工場のベテラン職人の技
はやぶさプロジェクトの実験段階で
地球に帰還したカプセルやサンプル採取用のボックスの試作を手掛けた
清水機械(東京・江東区)社長の山崎秀雄さんに電話でお話を伺いました。
清水機械は、従業員5人。
最年少は63歳。山崎さんは来週18日に68歳の誕生日を迎え
平均年齢は65歳くらい――。
プロジェクトの構想段階で
カプセルの風洞模型(空力性能を確かめる模型)や
サンプルを採取する装置――100~200のアイディアの中から
可能性のありそうなものを、実際に弾丸を撃てるものを含め――
試作をJAXAが清水機械に依頼。
(イトカワの微粒子が入っていたニュースを聞いて)
山崎 「すごく嬉しく思ったのと、
川口先生が喜んだ顔を見られて二重の喜びです」
川口 「試作するには、清水機械さんのように
臨機応変に応えてくれる方がいないと できないんです」
弘兼 「宇宙技術を、下町の熟練工の方々がが支えているっていうのは
不思議な感じがしますね」
■はやぶさ2の行先は??
国からの正式なGOサインを待ちながら、すでに準備に入っているという
“はやぶさ2”プロジェクトについて伺いました。
はやぶさは『行けるところ』としてイトカワに送りましたが、
今度は より積極的に『知りたいところ』に探査機を送る予定。
知りたいこととは・・・
地球上の生命が生まれる環境を作る“有機物”や“水”の起源。
川口 「その故郷に行こうということなんです。
たとえば、火星を回っている小天体に行くと、
そこは有機物と水のふるさとがある――。
そこに行ってサンプルを持って帰ろう――ということですね」
地球温暖化の原因は二酸化炭素とされていますが
“二酸化炭素のふるさと”から試料を採取することで地球の過去がわかる!
川口 「我々の進化をひも解くカギを提示することができる――
それを狙ってます」
■お送りした曲目
◆未知との遭遇 (サウンドトラックより)
(弘兼セレクション)
◆テルスター / トルネイドス(トルナドース)
(弘兼セレクション)
◆見上げてごらん夜の星を / 坂本九
(川口淳一郎さんのリクエスト)
◆案山子 / さだまさし
◆500マイルも離れて / ピーター・ポール&マリー
(川口淳一郎さんが初めて買ったアルバムの一曲)
川口淳一郎さんの名言・好きな言葉はこちらをご覧ください。