6月26日 犬塚 弘さんの名言
■最近のお笑いの芸風をどのようにご覧になっていますか?
(自分が)年をとった、時代が違うのかな、と思うんです。
でも、ある番組で、若者と話をする機会があって、
クレイジーのギャグの話をしたり、
動いて見せたりしたことがあるんです。そうしたら
「どうして、今の人達はそういうことをやってくれないんですか?」
「人をけなしたり、バカにするお笑いはイヤです」
・・・って、20代の人が言うんです。
そういう若者もいるんだな、って初めてわかって、
今、僕が感じているのは・・・
今は“テンポ”が速くなってます。
でも、テンポがある中にも“間“があってもいいと思うんですよ。
ポンポンポンポンしゃべってても、
途中で、一拍でも二拍でも“間”をあけて、
話の続きをだしたら、そこにお笑いに“溜まり”ができて、
次のセリフで笑えるんじゃないかと思うんです。
(それなのに)途中、笑いが入る所じゃないところで、
(編集で)“笑い声”を入れるから・・・
違うんじゃないかな、と思うんです。
植木がとんでもないところに出てきて、周りの人が睨んでる・・・
それを見て
『あれ?・・・あぁ、お呼びじゃない』と独り言を言って、
で、横の人を見て『お呼びでないよね?』と言っても、睨まれてる…。
弘兼 「その頃、半笑いになってるんですよ、
その“間”ですよね」
その“間”を見てる方、聴いてる方に与えてあげることが
必要だと思うんです。
どうして、僕たちは できたかというと、
落語をよく見に行ったんですよ。
そうすると“間”が面白いんです。
弘兼 「たしかに落語の名人は“間”がうまいですね」
■クレイジーキャッツのムードメーカーは誰ですか?
コソっとおかしいことをして笑わせるのは 谷 啓です。
ハナが亡くなって、ハナのうちにタレントが集まって、
最後に、クレイジーのみんなが残って、
応接間で植木と話をしてたんです。
そこに谷 啓が来たんで、
「帰るの?」と聞いたら
黙って、二人の前に立ったまま、右足を上げて、
靴下を脱ぎだしたんです。
裸足になった足を僕たちに向けると・・・
『お先に失礼』って書いてあるんです。
「また やられた!」って・・・(笑)
奥さんに聞いたら
「出かける時に、自分の部屋で足の裏に何か書いてたわよ」って
こういうわけなんです。
弘兼 「仕込んでたんだ(笑)」
こういうのが いくつもあって何十年たっても、みんなが集まると
「谷啓はこうだった」「植木はこうだった」って言って笑ってるんです。
■メンバーの中で最も気が合った人は?
谷 啓と植木ですね。
僕は芝居の世界に入りましたけど、
東京でやると、植木は必ず観てくれて、終わると必ず
「あの場面は、こうした方がいいんじゃないか」
と言ってくれるんです。うれしいですね。
始まる前、楽屋に入ってきて、
「ご苦労さん、ご苦労さん」って(劇団員の)肩を叩いていくんです。
弘兼 「映画そのまんまですね(笑)」
終わったら、また入ってきて、
みんなが「お先に失礼します」って帰って、誰もいなくなった頃
「ワンちゃん(=犬塚さん)が主役なんだから
(終演後)最後、なんで、普通に頭を下げるんだ!
翻訳モノ(外国の芝居)なんだから
両手広げて、右足を下げて『ありがとうございました』って気持ちで
お辞儀するんだよ。
ワンちゃん、そういうところが地味なんだよ!
日本の芝居じゃないんだよ!」
・・・そこまで言ってくれるんですよ。うれしいでしょ?
■犬塚 弘さんの好きな言葉
『飄飄として訥訥と』
(自分の)性格もあるし、
人生ってこうじゃないかな・・・僕の生き方がこうなんです。
風に逆らわずフラフラっと、
あとは、ボツボツと、自分のやりたいことをコツコツやって…
力まないでやっていこうな、と思って・・・
そういう人生だったんです。
弘兼 「これからも、こういう雰囲気で…」
もう81ですから、それこそ“飄飄”です(笑)