3月26日 特集 江戸前の魚 ゲスト:磯部雅彦さん
◆テーマ
『江戸前の魚、食いねえ!』
この日のゲストは東京大学副学長で
「東京湾の環境をよくする ために行動する会」会長の磯部雅彦さん。
実家の乾物屋さんで
東京湾の魚が売られていたことや
船橋で潮干狩りを楽しんだことがきっかけで
海を好きになったという磯部雅彦さんは
東京湾が汚れてきたことで
“研究”に取り組むようになり
東京湾の環境を良くするために行動する会を設立。
昨年末に発表した『江戸前の魚喰いねぇ! 豊饒の海東京湾』(東京新聞出版部)では
“江戸前の魚”を食べることで、日本の未来が明るくなる――と提言。
そのワケは?!
■“東京湾” ”江戸前”の定義は・・・?
【東京湾の範囲は?】
昔は「江戸前」と呼ばれていた東京湾――。
「江戸前」とは
隅田川河口(深川)から多摩川河口(品川)まで――をいっていましたが
「東京湾」と呼ばれるようになってから、その範囲が広がり、現在は
「東京内湾」=富津岬と観音崎を結んだ線の内側(北側)
「東京外湾」=「東京内湾」と剣崎~篠崎を結んだ線の内側。
磯部 「長さが50キロ、幅が20キロという“長方形”で
深さが平均15メートル、最深50メートルです。
“50km”に対して
“50m”は千分の一ですから、
紙の上に東京湾を書く際、50キロを5センチに書いたとすると
深さは0.05ミリ――鉛筆の芯の太さにもならないんです。
実は正確に書こうとすると、
鉛筆では書けないくらい浅いんです」
【江戸前の魚】
東京湾の魚は約400種類(外まで含めると500~600種類)で
そのうち食べられる魚は数十種類。
江戸前の魚=アナゴ という認識をお持ちの方が多いかもしれませんが
日本全国の漁獲量のうち、東京湾で最も多く獲れる魚には
「スズキ」があります。
貝類では
「アサリ」がおなじみ。
そのほか「アナゴ」はもちろん
「シャコ」「コノシロ」(コハダ)など・・・
磯部 「それぞれの季節で いろいろ魚が獲れます」
ごく稀に、マグロが入ってくることもあるそうです。
■寿司の楽しみ方
「名前も何も知らないで食べるのはつまらない」(磯部)
この日は
『江戸前』の特集――。
当然のように「お寿司」の話題が飛び出すと・・・
磯部雅彦さんは
「この魚は何なのか」「どこで・どのように獲れたのか」
考えることが大事であり、食の楽しみにつながる――と指摘。
磯部 「 『○○さんが獲ったエビ』というように…。
『網で獲ったのか?釣ったのか?』と
考えながら食べるのが楽しいし、
それがまた“海洋国家”としての文化じゃないかと思いますね」
弘兼 「広島の厳島神社には『アナゴ飯』があって
1メートル近い大きいアナゴを使うんです。
東京湾は、20センチくらいでしょうか。
ちょうどいい大きさがあって、
天ぷらで一本揚げしてもらうと
箸でサクっと二つに割って・・・
あの大きさが一番おいしいと聞きますね」
■環境問題
【東京湾の環境問題】
1970年代、最も東京湾が汚れていた時期と比較して
水質が改善された東京湾ですが、
魚や生物が戻ってきたとは言い難い・・・
磯部さんは「海底の泥がきれいになっていない」ことを
その理由に挙げています。
磯部 「海底にたまった有機物が分解されるときに
酸素を消費して、水が“酸欠状態”になることで
“青潮”といって、
牛乳に緑色の絵の具を混ぜたような…
濁ったコバルトグリーンのような色になります。
酸素がなく、毒性のある物質(硫化水素)が入っているので
魚や貝が死んでしまうことがあります。
水は良くなったけど、
生物の住み心地は全体としては“良くない”状態だと思います」
【津波の心配は?】
研究者として「100%」という言い方はできませんが…と前置きした上で
磯部さんは津波の危険性を「まず大丈夫」と指摘し 2つの理由を紹介。
■東京湾の中で地震が起きた場合、
湾が浅いため、海底が変動しても、大きな津波にはならない。
■外からの津波は、富津岬~観音崎が狭いため
津波のエネルギーが全て押し寄せることはない。
(むしろ注意が必要なのは“高潮”)
弘兼 「自然な防波堤ということですね」
■現役 漁師が唱える 干潟の重要性
番組後半には、木更津生まれで東京湾での漁師生活31年目
親子3代漁師の
金萬智男[さんにも加わっていただきました。
金萬さんは、
全国の漁師仲間が集まり漁業の活性化を目指して立ち上げた
『エンジョイ・フィッシャーマン』で
「木更津金田の浜活性化協議会」「打瀬舟(うたせぶね)建造プロジェクト」など
様々な活動を展開。
金萬 「飲み仲間が多くて、夢を語り合う中で
次から次へとプロジェクトが立ち上がるんです」
【打瀬舟】⇒帆を挙げて風を受けて網を引く船
【打瀬舟】⇒(かつては東京湾に1700隻存在)
東京湾はその昔、魚種が豊富で
“世界一の海”だったという金萬さんは
埋め立てが進み“バランス”が崩れた今
“浄化作用”がある
干潟 の重要性を強く訴えています。
金萬 「東京湾は ほとんど干潟がなくなって
アマモがなくり、生き物がなくなって浄化作用がなくなる…。
流域の人口は増えて、バランスが悪くなってるんです。
だから、少しでも元に戻せるように、と思って、
いろいろやっているんです」
■天ぷらだからこそ味わえるギンポ
5月6月頃になると天ぷら屋さんで見かけるようになる
『ギンポ』が好き――という弘兼憲史さん。
金萬さんによると「東京湾でしか食べられていない」そうで
「天ぷら」にして食べることがほとんどなのだとか。
弘兼 「高級な魚なんですか?」
磯部 「“天ぷら”にするから
食べられるようになった魚じゃないでしょうか。
“煮て”“焼いて”食べる魚ではないですね」
弘兼 「ギンポが楽しみで天ぷら屋さんに行く人が多いんですよ」
■磯部雅彦さん、金萬智男さんの活動について
磯部雅彦さんが会長を務める
『東京湾の環境を良くするために行動する会』について詳しくは
こちらを、
金萬智男さんの活動については、
盤州里海の会のホームページ
エンジョイ・フィッシャーマンのホームページをご覧ください。
■お送りした曲目
◆Tokyo / 井上陽水
(弘兼セレクション)
◆東京ラプソディ / 藤山一郎
(弘兼セレクション)
◆この広い野原いっぱい / 森山良子
◆勇気あるもの / 吉永小百合
◆翼をください / 赤い鳥
磯部雅彦さん、金萬智男さんの名言・好きな言葉はこちらをご覧ください。
2011年03月26日