きらきらと情熱の奥。
小さい頃から、私は百科事典を読むのが好きだった。
とくに、誕生石のページが好きだった。
赤・紫・水色・オレンジ・オーロラ・白、、、
12に分かれて光るその宝石にいつも魅せられていた。
私の誕生石。
1月生まれはガーネット。
なぜか、大嫌いだった。
くすんだような落ち着いた色の赤は、キラキラ輝く石に魅せられていた少女にはやや退屈だった。
弟は、水色のアクアマリン。
母は、薄紫のアメジスト。
父は、緑色のペリドット。
なんだよ、みんなキラキラして。
百科事典を見ながら、幾度となく怒った。キラキラ輝くのが偉いようにみえた。
オパールなんて、海の中、洞窟の中、を眺めているようだったし、
トルコ石は、宇宙から地球を眺めているようだった。
それぞれの良さがあった。
でも、ガーネットにはあまり惹かれなかった。
じっと黙っているような、情熱を溜め込むような、赤黒い石。
なんでそんなに溜め込むんだろう。
見ていると苦しくなった。
一番触れて欲しくないところを触れられるようで、
なんか嫌だった。
意地をはっているように思えた。
吐き出せばいいのに!
溜め込んだっていいことないのに!
ためしに、ネットで「ガーネット」とひいてみる。
パワーストーン「ガーネットの意味」...
ガーネットは努力と向上と繁栄を象徴する石。永久の愛と幸福をもたらしてくれます。
『ほんとかよ。』
これが素朴な感想。
努力。
たしかに
努力の色といわれればそうかもしれない。
腹の下の方で、グツグツと煮える何かを抱えて 向かう。
その方向が 正しいのか 正しくないのか は分からない。
でも、その場所に居続けない。
なぜか絶えず何処かへ向かって歩もうとしている。
そんなところが似ているような気がした。
いつだったか、幼い頃 母の化粧台で遊んでいた時。
小さな小さな指輪を二つ見つけた。
誰の指にも入らないような 小さな指輪には、小さな小さな石がついていた。
ひとつは、みずいろの石が。
もうひとつには、赤い石が。
「これはね、ベビーリングってゆーの。あーちゃんと、しゅんちゃんのだね」
そこにあった赤の石は、綺麗だった。
紛れもなくガーネットだったけど、
小さければ小さいほど、キラキラと情熱的に輝いていた。親の愛情もあいまって。
奥に秘める情熱や努力は あまり見せるものじゃないのかもしれない。
見せないから、いいのかもしれない。
そこだけが、ガーネットの好きなところだ。