大人の絵本
あなたは、
『ちいさなちいさな王様』という絵本をご存じですか。
アクセル・ハッケ作
ミヒャエル・ゾーヴァ画
ドイツの作家さんが書いた、大人も楽しめる絵本。
ある日、主人公は、<人差し指ほどの王様>と出会う。
主人公の家の本棚と壁のすきまに住んでいる王様は
クマの形をしたグミが大好物。
主人公にグミをもらっては、王様の住む世界の話をする。
王様の世界では、
生まれた時が一番大きくて、その後どんどん小さくなって、記憶もなくなってゆく。
つまり、子ども時代が人生の終わりにあるということ。
小さくなりすぎて消えてなくなってしまうのか。
はたまた、どこまでも限りなく小さくなり続けるのか。
そこは定かではない。
生まれた瞬間になんでもできて、すべての可能性が与えられているんだけど、
毎日、それが少しずつ奪われて縮んでいって、どんどん子どもになってゆく。
だから世の中の理屈とかわからなくなるし、どんどん想像力を働かせて生きてゆくようになる。
∞
人間の世界とまるで逆のようで、逆とは言い切れないような...
なんとも不思議な気持ちになる絵本です。
話の内容も大好きなのですが、
とにかく画も大好き。
主人公の胸ポケットに入った王様とか、自分と同じくらいの大きさのグミを持つ王様とか。
油絵で優しく、奥行きのある絵を添えてくれています。
なぜこの絵本のことを思い出したのかというと...
さっき、文化放送ロビー階から1階へ降りる階段付近で不思議な空間に出会ったから。
それは、階段の下というか裏にある<デッドスペース>。
そこになぜか、【イスが一脚】 置いてあったのです。
なぜ、イスが?
しかも、コンクリートの地面には似合わない、木製の椅子。
私がランチに外へ出たとき、
今日はそこに【小さな小さなおじいさん】が座っていたのです。
まぁ通りがかったおじいさんがたまたま腰を降ろしただけだったかもしれませんが、
目じりが下がり、ニコニコした表情で、カップ麺を食べていました。
それはそれはおいしそうに、純粋にそこでカップ麺を楽しんでいるようでした。
なぜか、その様子が、ちいさな王様と重なったのでした。
その時 私は通りすがりだったので、まじまじと見ることもできず。。。
でも、どうしても気になったので、ランチを終えてもう一度見てみることに。
すると、
ちいさなおじいさんは、もうそこにはおらず
一脚の椅子だけが、ただただそこにありました。
なんの変哲もない椅子なのに。
幸せの跡が残る、
不思議な雰囲気の残るデッドスペース。
椅子をどかしてみたら、ちいさなちいさな王様のように、
ちいさなちいさなおじいさんの世界があるかもしれませんね。